調査 / 地域ブランド調査2015 | 2015年8月7日 金曜日

朝ドラ舞台にみる観光意欲と入込客数の関係
~地域ブランド調査9年の結果から・観光意欲度編~

弊社が実施している、消費者が各地域に抱いているイメージ等を明らかにする「地域ブランド調査」は2006年から調査を開始し、2015年実施分(現在実施中。9月下旬発表予定)で10回目を迎える。本項では10回目の発表を前に、2006年から2014年までの9年間の結果推移が示唆する地域に対する消費者イメージの変容についてレポートする。

※地域ブランド調査の調査概要等については地域ブランド調査2014特設ページをご参照ください。

今回取り上げる指標は「観光意欲度」。同指標は任意の地域名について「今後、観光や旅行に行きたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ行ってみたい」を100点、「機会があれば行ってみたい」を50点、「どちらともいえない」を0点、「あまり行きたいとは思わない」を0点として、加重平均し点数を算出している。

今回はNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)で舞台となった地域の観光意欲度、および入込観光客数の変遷について、小浜市(福井県)、境港市(鳥取県)を事例に結果を見てみる。
小浜市は2007年の下半期に放映された「ちりとてちん」の舞台の一つ。境港市は2010年上期に放映された「ゲゲゲの女房」に関連し「水木しげるロード」がある。

■放映後急増する小浜市・境港市の観光客数、しかし放映後では両市に差が
【図1】は、地域ブランド調査開始時の2006年から2014年までの小浜市、境港市の入込観光客数の推移である※1。小浜市の推移をみると、放映前は150万人程度で推移しているが、放映後の2008年には183万7千人と20%近く増加。境港市は2006年の140万人から放映直前の2009年の観光客数は180万人程度と順調に入込観光客数が増加している中、放映された2010年には300万人を超え、両市ともにドラマ放映中、放映直後に入込観光客数は大幅に増加している。
しかし、小浜市は放映翌年の2009年から観光客数は減少し、2010年には134万人と放映前よりも入込観光客数が減少している。一方、境港市も放映後は減少しているが、2011年から2013年にかけて放映前よりも多い水準で推移している。

■観光意欲度は、放映後1~2年後にピーク。意欲を行動に結びつけたかどうかで差?
続いて、上記の入込観光客数の推移にそれぞれの観光意欲度の点数推移を加えたものが【図2】である。両市に共通する特徴として挙げられるのは、観光意欲度はドラマが放映され入込観光客数がピークとなった年ではなく、小浜市については放映後1年後の2009年、また境港市は同2年後の2011年と遅れてピークが来ている点だ。また、観光意欲度の点数も放映後数年は放映前よりも高く推移しており、ドラマ放映から数年間は舞台となった地域に対して観光「意欲」が高まる傾向が見て取れる。このことから、小浜市はドラマ放映によって高まった観光「意欲」が実際の観光「行動」にうまく結び付かなかったのに対して、境港市は「意欲」と「行動」がうまく結び付けられた事例と言えるのではないだろうか。

■「意欲」と「行動」を結び付ける3つの違い
それでは観光「意欲」を如何にして観光「行動」に結び付けるのか。ここでは2市の置かれた状況を3つの点から整理してみたい。
一つ目は「コンテンツの性質」の違いについて。小浜市の「ちりとてちん」はドラマ放映のみであったのに対して、「ゲゲゲの女房」に関連する「ゲゲゲの鬼太郎」などは漫画、アニメなど他の媒体でドラマ放映前後でも継続的に露出している点で大きく異なる。
二つ目は「これまでの地域の取組みとドラマとの関連性」について。境港市は同市が水木しげる氏の出生地であることなどを契機に1993年に「水木しげるロード」の整備をはじめ、「ゲゲゲの鬼太郎」というコンテンツを中心とした観光客誘致を継続的に行っており、「ゲゲゲの女房」の視聴により観光「意欲」を持った来訪者の受け入れ態勢が既に整っていた。対して小浜市はドラマ放映決定後から既存事業と「ちりとてちん」との関連性構築や来訪者受け入れのための対応を行うことになる。
三つ目は「導線」について。境港市は米子自動車道など中国地方・関西地方からの利便性に加え、市内にある米子鬼太郎空港、また境線の鬼太郎列車など首都圏からの来訪者に対しても導線が整備されていた。対して小浜市は、市内を横断する舞鶴若狭自動車道は2008年段階で関西方面は開通していたものの、以東は未開通で北陸・中部方面からの動線(2014年全面開通)。また、首都圏からは東海道新幹線で米原経由、もしくは石川県小松空港経由と決してアクセスはよくない。

上記のように整理してみると、境港市は
・放映前から「ゲゲゲの鬼太郎」など関連するコンテンツが周知され、放映後も継続的に露出されていた
・ドラマ放映で掘り起こされた観光意欲・需要を受け入れる地元側の体制が整っていた
・同、高まった観光意欲・需要を実際の行動に結びつけるための導線が整備されていた
と「意欲」を「行動」に結びつける条件がそろっていた、極めて稀有な事例ということができる。

むしろ小浜市のように、ドラマの放映が決定してから来訪者の受け入れを検討するのが通常のケースといえよう。その際、先に紹介した「観光意欲度は、放映後1~2年後にピーク」という傾向は、今回は紹介しなかったが長野県安曇野市(2011年前期「おひさま」)や大阪府岸和田市(2011年後期「カーネーション」)、東京都大田区(2012年前期「梅ちゃん先生」)、また岩手県久慈市(2013年前期「あまちゃん」)などでも同様であり、観光意欲・需要を放映年以降にも実際の来訪に結び付ける方策を検討することが朝ドラ効果を最大化する上で重要なのではないだろうか。

■「意欲」と「行動」の間にある「変数」
なお、「意欲」と「行動」は必ずしも相関はせず、その間には様々な変数が存在する。例えば上記の「導線」については、小浜市の2014年の観光意欲度は前年より低下しているが、入込観光客数は逆に増加している。これは同年舞鶴若狭自動車道の全線開通により北陸・中部方面からのアクセスが向上していることが寄与しているものと考えられる。また「周辺地域」の影響も変数となる。境港市は2013年に観光意欲度は低下しているが、入込観光客数は前年とほぼ横ばいで推移している。これは近隣の出雲市において出雲大社の平成の大遷宮による影響が考えられる(それぞれ【図2参照】)。
「意欲」と「行動」観光意欲度が上がった(下った)からと言って同年に入込観光客数が必ず上がる(下る)というわけではなく、各地が抱えている課題や置かれている状況(変数)を勘案し、観光意欲度の推移に留意する必要がある。

 

※1小浜市の入込観光客数は福井県観光客入込数推計より、また境港市の入込観光客数は鳥取県観光客入込動態調査より引用。グラフ筆者作成

(文責:安田 儀 ブランド総合研究所 コンサルタント)

 

 

 



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