コラム / 注目!地域ブランド | 2014年4月9日 水曜日

辛味大根でまちおこし (長野県坂城町)

全国の辛味大根を一堂に集めて、多くの人にその魅力を知ってもらおうというイベント「全国辛味大根フォーラム」が、長野県坂城町で開催され、大成功で幕を閉じた。(「月刊商工会」2010年4月号より)


すらりと長くみずみずしい青首大根が市場のほとんどを占める中、長野県や東北地方、京都など一部の地域では、代々受け継がれてきているのが短胴でぎゅっと引き締まった地大根。その中でも辛味の強いものが「辛味大根」と呼ばれている。

坂城町のねずみ大根

坂城町のねずみ大根

長野県の坂城町には、ずんぐりむっくりとして、下ぶくれのような愛嬌のある形がまるでねずみに似ていることから、「ねずみ大根」と呼ばれる辛味大根がある。実はこの坂城町には「神ネズミと唐猫様」という民話(※)が残されているくらいねずみと縁が深い地域でもある。

※昔、この地で人の血を吸う害虫が流行した。そのときに、白いねずみが現れて害虫から町を守った。町の守り神として神のように扱われたねずみは、やがて大ねずみに成長。人里に下りて食物等を食い荒らし始めた。そこで、唐の国から大猫を呼んて退治したが、その大ねずみが逃げる際にかじった跡が岩鼻、そのときに出来たのが千曲川になった。なお、このねずみと大猫を奉ったのが鼠大明神と唐猫神社である)

■辛味大根フォーラムに全国13産地が集合

坂城町では、ねずみ大根が漬物や煮物などにも以前から用いられてきただけではなく、「おしぼりうどん」というメニューが定着している。これは、すりおろした辛味大根を搾っただけの白濁の汁に、うどんをつけて食べるもの。一口食べるだけでツーンと大根の強烈な辛さが鼻に抜け、次に口いっぱいに痺れが広がる。痺れが引いた頃には、今度は胃袋一杯がぽっかぽっかとあったかくなる。

この汁に味噌やかつおぶしなどの薬味を入れると辛さが抑えられて、同時に大根が持つ甘味や風味が引き立つ。この「ねずみ大根」をブランド化しようと考えたのが「辛味大根フォーラム」。全国の辛味大根産地全13地区の関係者が一堂に会して、「辛味大根のブランド化と地域おこし」をテーマに各地区の代表者が辛味大根の栽培や商品づくり、悩みなどを、実際の大根を片手に、熱い口調で語り合おうというものだ。(表※参加した辛味大根の産地一覧)。

日本全国から集まった辛味大根は実に様々。鮮やかな紅色が特徴なのは安家地大根(岩手県岩泉町)。小さくて丸くて水分がほとんどないくらい硬いのは鷹峯の辛味大根(京都市)で、強烈な辛さがある。辛さに甘さが残る「あまからぴん」が特徴なのは新田辛味大根(長野県下條村)。

「辛味大根」と一口で言っても、全国の産地や品種によって様々な形と味のものがあることが「辛味大根フォーラム」で紹介され、参加したそれぞれの産地の人々は興味深くその話に聞き入っていた。 それだけじゃない。実はこれらの大根を活用した商品開発やメニュー作りも各地でいろいろと取り組まれており、それも紹介された。例えば滋賀県米原市の伊吹大根を使ったドレッシングが大ヒット中。この伊吹大根はなんとのど飴の材料にもなっているという。大阪市の田辺大根はカレーやケーキの材料になっている。

そして、坂城町では大根焼酎を作ったところ人気となった。さらに「日本一辛い焼酎」をめざして試作醸造したのが「大辛ねずみ」で、この試作品は専門家の間で大絶賛され、本格的に商品化が進められている。ちなみに初年度の製造本数は1万本(予定)だが、予約が殺到しているという。

■辛味大根にこだわった辛味大根フォーラム

いま、野菜のブランド化を行おうと取り組んでいる地域は全国でもたくさんある。しかし、生半可な取り組みではそう簡単には成功しない。単に地名のついた名前で売り出そうとしても、その野菜そのものに特徴(差別的優位性)がなければ、なかなか売上向上や販売価格の上昇にはつながらないからだ。

また、その野菜を使って加工品を作ったとしても、なかなかヒット商品には結びつかないことが多い。たまたま一時的にヒットしたとしても、それが継続的な取り組みにつながり、地域の活性化に結びつくようなビジネスモデルが作られなければ、「野菜の地域ブランド化による地域活性化」という取り組みとはいえない。

坂城町のイベント「辛味大根フォーラム」は、辛味大根という地場野菜を紹介するだけではなく、他産地と協力し合いながら、辛味大根そのものの認知度を向上し、加工品やメニュー作りなどのヒントを得ることが目的だった。さらに、飲食店のメニュー開発、地元での消費拡大、観光需要の開発などにつなげようという多角的な取り組みの一環でもあった。 結果的には、地元だけではなく、参加した各地の栽培農家やJA、行政などの担当者は他産地との交流で刺激を受け、多くの知識とやる気を得ることにつながった。もちろん全国の産地が集まったイベントには、地元以外のメディアも注目し、PR効果も大きかった。その意味でもこのイベントの意義は大きかったようだ。

第一回辛味大根まつりの様子

ただ、このイベントはあくまでスタート地点であることを忘れてはならない。せっかく生まれた産地間交流を、今回限りとするのではなく、いかに今後につなげるかが重要である。そして単に情報を得るだけではなく、ここから新たな展開に結びつけ、各地での活性化につなげたもらいたいものである。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

外部リンク:全国辛味大根フォーラム(坂城町役場HP)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2010年4月号に掲載されたものです。

 



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