コラム / 注目!地域ブランド | 2014年7月7日 月曜日

大きく希少性のある高級イチゴ「ももいちご」 (徳島県佐那河内村)

高級イチゴとして人気の高い「ももいちご」。 高齢化の進む四国の村で作られた地域ブランドだ。数量を追い求めるのではく、品質と希少性を大切にしながらブランド価値を守り続けている。

◆栽培方法工夫、1粒1000円にも

徳島県佐那河内村でつくられている「ももいちご」は、とにかく大きい。一番粒が大きいものだと、握りこぶしくらいの大きさ、つまりテニスボールを一回り小さくしたくらいの大きさがある。 このイチゴが12粒から20粒が入った箱は、1万円以上で販売されている。つまり1粒で1000円以上の値がつく高級いちごなのだ。

ももいちごは、JA徳島市佐那河内支所と、卸売会社の大阪中央青果との共同プロジェクトとして1992年に開発された。佐那河内村にある約30軒の農家が栽培方法にこだわり、年間約140トンが生産されるだけの、希少性の高い地域ブランドなのである。

◆ミカンに代わる作物として

佐那河内村がある徳島県では、81年2月に大寒波に見舞われ、同村の特産品であったミカンの樹木が全滅に近い被害を受けてしまった。これを契機に露地ミカンをスダチや高糖度系ミカンへと転換してきたが、91年のオレンジの輸入自由化の影響を受けて、ミカンの市場価格は暴落し、販売額が激減してしまった。

高齢化の進んでいた同村の農家にとって、ミカンは決して栽培しやすい果物ではない。山の斜面に植えた樹木は手入れをするにも、重い果実を収穫するにも重労働だ。だから転作を考えることへの抵抗は小さかった。

同村ではミカンからの転作する品目としてイチゴに着目していた。イチゴであれば木に登って収穫をすることも、重い果実で腰を痛めることもないし、なによりミカンより販売単価が高い。

しかし、当時、四国は本州とは橋でつながっていなかったため、収穫したイチゴを県外に出荷するには船で運ばざるをえない。それでは、本州の産地と比べると、輸送コスト、新鮮さという面で不利である。そこで、本州の産地では栽培していないような特色があり、付加価値の高い品種を選ぶ必要がある。その時に紹介されたのが「愛知二号」という品種のイチゴだった。

このイチゴは大粒の丸みを帯びた果形で香りが強く、ジューシーなのが特徴。しかし、実が柔らかいために傷つきやすく、栽培に手間がかかる。そのために、全国的にはあまり栽培されていない稀少性の高い品種だった。佐那河内村ではこの品種を育てることにしたが、どうせなら徹底的に栽培方法にこだわり、日本で一番大きいイチゴに育てようと考えた。

同村は徳島県中東部の山間に囲まれた盆地状の土地柄から、平野部よりも日照時間が短く、昼夜の温度差が大きい。これは高品質で大きいイチゴの栽培にとっては好条件となる。つまり、イチゴの実が赤く色づくまでに多くの日数を要することになるため、収穫量は減るが、逆に大きさや甘さはよくなるからだ。

大きさにこだわるため、通常のイチゴであれば1つの株にたくさんの実が同時になるが、ももいちごの場合にはつぼみの状態で花を間引き、少ない実しかならないようにした。栄養を少ない実に集中させて、大きく育てるわけだ。その実を収穫すると次の花を咲かせ、4~5個程度しか実をつけないようにする。通常のイチゴでは20~30個の実を結ぶのに比べると、大幅に少ないが、その分だけ大きく、美味しくなるというわけだ。

ももいちごは大きくみずみずしいという特徴がある一方、やわらかくて痛みやすいという欠点もあるので、大きくなったイチゴが地面についたり、重さで株が倒れたりしないように、地面の上に敷いたスノコの上で育てるという方法をとった。

また、運ぶときもその振動で傷がついてしまわないように、傷みにくいパッケージの研究にも多くの時間を費やした。

こうした努力の結果、ももいちごはその大きさと品質の高さから、イチゴの中での最高ブランドとしてを高く評価されるに至ったのだ。

しかも希少性を保つために、佐那河内村内にある30軒ほどの農家だけしか栽培していない。また、販路としても地元と卸売会社の大阪中央青果経由で大阪周辺でしか販売していない。その結果、ももいちごは品質管理が十分にできるのと同時に、手に入りにくい“幻のイチゴ”として高い人気が保てているのだ。

◆ブランドの拡張、新たな展開へ

ももいちごのブランドが高まるに連れて、2つの新たな試みが動き出している。1つは新たなブランド「さくらももいちご」の開発だ。

「さくらももいちご」は2008年末に新たに生まれた新品種のイチゴ。ももいちごとは品種が異なっており、形はコロコロとした丸みを帯びたももいちごとは異なって円錐形。実の中まで赤く色づいており、味は「ももいちご」よりも甘さが高い。また、酸味もしっかりとあり、果肉の食感はしっかりとした歯ごたえがある。現在では栽培農家はわずかに8軒のみで、ももいちごよりさらに稀少性が高い。

もう1つの取り組みはアイスクリーム。ハーゲンダッツ・ジャパンからももいちごを使ったアイスクリームが限定製造された。2010年1月に銀座の直営店「ハーゲンダッツ ラ メゾン ギンザ」の店内での限定メニューとして「ももいちごアイスクリーム、ココナッツムースとライムジュレのグラス仕立て」が誕生。価格は1,500円で限定提供された。さらにテイクアウト用として「ハーゲンダッツ『ももいちご』」(2個1600円と、6個4800円)が店頭による限定販売と、専用ウェブサイトで5500個が抽選販売され、いずれも人気を集めた。

数量をやみくもに追い求めるのではなく、品質と稀少性を大切にしながら、ブランド価値を守り続ける。ももいちごの戦略はまさに農産物のブランド戦略の典型的なケースなのだ。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年5月号に掲載されたものです。

 



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