コラム / 注目!地域ブランド | 2014年7月28日 月曜日

B-1グランプリ生みの親~ 八戸せんべい汁 (青森県八戸市)

醤油ベースの鶏や豚の出汁でごぼう、きのこ、ネギなどの具材と一緒に、せんべいを割り入れて煮込む。なんとも不思議な鍋料理が大ブームになっている。B級ご当地グルメブームの生みの親とも言えるのが八戸せんべい汁だ。

八戸せんべい汁に割り入れるせんべいは、小麦粉と塩で作る南部煎餅の中でも、せんべい汁の具にすることを前提に焼き上げた「おつゆせんべい」という専用のものらしい。

これを鶏や豚などの肉、時には魚、そこにごぼうやネギ、きのこなどたっぷりの野菜などを入れて煮込んだ中に手で割って入れる。上手に煮込んだせんべいは、すいとんより歯ごたえがあり、モチモチとした食感となる。

せんべい汁は、今から約200年前の江戸時代末期の天保の大飢饉の頃に、八戸藩内で生まれたとされている。もちろん、決して祝いの席のごちそうでもなければ、もてなしの料理でもない。しかし、それから200年間、八戸ではこのせんべい汁を日常的に食べてきたらしい。

地元以外ではほとんど知られていなかったせんべい汁を全国区にして、街を活性化する題材にしようと考えたのは木村聡氏。ところが「せんべい汁を食べにわざわざ八戸に来る人なんかいない」と相手にしてもらえなかった。

それならばと、南部せんべいと具材をセットにした「八戸せんべい汁」の土産品を商品化しようと考えたところ、「せんべい汁なんかを土産に買う人はいない」とやはり相手にしてもらえなかったという。ところが、東北新幹線八戸駅開業の平成10年に発売してみると、これが意外性と美味しさで評判が高まり、大ヒット商品に発展した。

それからせんべい汁の情報発信を始め、15年に地元有志と「八戸せんべい汁研究所」を設立し、木村氏は事務局長となってせんべい汁を使ったまちおこしに本格的に取り組み始めた。

八戸せんべい汁のことを多くの人に知ってもらうために、話題性のある企画でのマスコミ対策に取り組んだ。例えば、B級ご当地グルメソングの草分けとなった「好きだDear!八戸せんべい汁」を制作し、CDを発売した。また、同研究所メンバーのシンボルである胸に「せ」の文字が入ったTシャツを制作。そして一度に1000食以上もの汁を作ることができる直径1.5mの大鍋「ま汁゙ガーZ」の登場。

こうした徹底した話題作りが功を奏して、せんべい汁の人気は徐々に高まってきた。

◆B-1グランプリの開催へ

そうした中、木村氏は全国でも同じようにB級ご当地グルメでまちおこしをしている人がたくさんいることに気づいた。「その人たちを一同に集めて、イベントはできないか」と考え、「B級グルメの祭典!B-1グランプリ」の開催を思い立った。

ちなみに、B級ご当地グルメの「B」とは、決して美味しくないという意味ではない。安くて旨い。つまり、A級が「よそ行き」、つまり晴れの日の食べものだとすれば、B級とは普段から気軽に親しんでいる食べものという意味。あるいは、レコードのB面のように、なかなか日の目は浴びないが、実は知られざる名曲が隠されていることがある。そういう地味なB級ご当地グルメに光を当てて、地域の活性化を目指そうというのが主旨。

木村氏はイベントの主旨を綴った長い手紙を送って、全国から参加団体を募った。そして「愛B(アイビー)リーグ」という協議会を立ち上げ、18年2月18日に、ついに全国のB級ご当地グルメを集めた「B-1グランプリ」の記念すべき第1回目の大会を八戸市で開催するに至った。出展したのは10団体。来場者数は1万7000人だった。

この大会でゴールドグランプリに輝いたのは富士宮やきそば学会。そこで、2回目の大会は、翌19年に富士宮で開催することになった。そして、その第2回大会は、参加21団体と急増し、来場者数は25万人にも膨れ上がった。まさにB級ご当地グルメブームの到来だ。

ちなみに、この大会では、八戸せんべい汁研究所は2年連続グランプリの富士宮やきそばに継ぐ準グランプリ(2位)に輝いた。そして、20年の久留米での第3回大会(24団体、20万3000人)、21年の横手での第4回大会(26団体、26万7000人)と、八戸せんべい汁は3大会連続で準グランプリに輝くという珍記録を達成した。22年の厚木での第5回大会(46団体、43万5000人)でも、なんとブロンズグランプリ(第3位)とまたもグランプリを逃してしまった。

◆利益や順位より情報戦を制すること!

八戸から始まったB級ご当地グルメのブームは、今ではとどまるところを知らない。「B級ご当地グルメ」をテーマにしたイベントが全国で開催されているが、いずれも大勢の人が集まる大盛況だ。ところが、こういうイベントに出ても、利益は出ないという。

B-1グランプリのように何十万人が集まっても、作れる料理の数は決まっており、手軽な価格がB級ご当地グルメの魅力だから、材料費や交通費などの経費を考えると、とても利益は出ない。もちろん人件費など捻出できるわけはなく、参加する人は全員がボランティアだ。つまり、彼らは利益のためにB-1グランプリに参加しているのではない。

B級ご当地グルメが人気になれば、それを求めて多くの人が集まる。飲食店の売上は伸び、商店街には人が戻ってくる。これによって、まちが活性化することを狙っているのだ。

八戸せんべい汁研究所が平成20年2月に行った飲食店調査の結果によると、八戸市内でせんべい汁を提供している店は約200店あるという。そのうち約160軒を「八戸せんべい汁ガイドマップ」に掲載しているのだが、要するに、せんべい汁の人気が高まれば、200店の店の活性化につながるということになる。

さらに、土産品の販売にもつながれば、土産店にも波及効果があり、南部せんべいの製造業、具材の生産者、そして観光業と、波及効果はいろいろとある。

「重要なのは、順位でも利益でもない。いかに八戸をアピールできるか。せんべい汁をきっかけに、より多くの人に八戸へ行ってみたいと思わせることが大切だ」と木村氏は言い切る。一見すると地味なせんべい汁が、「B級ご当地グルメ」という旗を掲げて気勢を上げることで、八戸を全国区にし、地元が活性化する。

それを全国ネットで実施しているのが愛Bリーグ。被災地支援活動として、会員団体が協力して東北の避難所などでの炊き出しを行っている。まさに地域のための活動なのだ。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考:八戸せんべい汁研究所

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2011年7月号に掲載されたものです。

 



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