コラム / 注目!地域ブランド | 2014年11月24日 月曜日

匠と現代 伝統的工芸品が現代風にチャレンジ (千葉県)

成田空港の第2ターミナルビル2階に、千葉県の伝統的工芸品であるとんぼ玉を首に飾ったチワワの大きなパネルと商品が登場した。「匠×現代」と銘打たれた新たな伝統的工芸品の挑戦の一歩だ。

千葉県が有している成田空港のディスプレイは、これまでは県内の伝統的工芸品を並べて展示しているだけで、十分には活用しきれていなかった。「成田空港への来訪者にとって印象に残る効果的な展示に変更したい」という考えから、思い切ったディスプレイの変更をすることにした。

狙いはいくつかあった。1つは旅行のために訪れた若い人に注目してもらい、伝統的工芸品に興味を持ってもらうこと。伝統的工芸品は千葉県のみならず、日本が誇る歴史ある文化であるが、今直面している最大の課題は職人(生産者)の高齢化と後継者不足。県内にある94の伝統的工芸品の生産者にアンケート調査をしたところ、「後継者がいない」と答えたのは過半数を超える53.8%にも達した。

実際、毎年のように百貨店などで展示即売会や実演販売を行っているが、その出展がままららなくなってきている生産者も多く、後継者を作ること、つまり若い人たちに興味を持ってもらうことは、業界にとって深刻な課題となっている。幸い、成田空港は海外旅行に向かう学生や若い人が多数利用するだけに、この場所での展示はとても意味がある。

もう1つの狙いは、実際の購入に結びつけてもらうこと。日本の伝統的工芸品は重要な文化として見直され、人気が急上昇している商品が増えている。

人気観光地には手ぬぐいや箸など、こだわりの商品を扱う店が多くの若者や外国人で賑わってきている。人気のあるものは、手づくりであるがゆえに予約をしてから数ヶ月待って手にすることができるという商品も少なくない。成田空港は海外への土産品を探す日本人および海外からの旅行客が多い。日本の文化をイメージするような商品には、興味を持って接してもらえるだろう。

また、このディスプレイが日本の伝統的工芸品を知ってもらい、日本文化を知ってもらうきっかけになれば、たとえその場での購入にはつながらなくとも、とても大きな意義がある。
こういう理由から、千葉県はこの場所のディスプレイを、若者や外国人旅行客などに興味を引いてもらえるようなものに変更しようと考えたのだ。

◆ペットとママの首飾りに

商品の展示内容を検討するにあたり、3つの伝統的工芸品を選び出した。

その1つが「とんぼ玉」だ。様々な色がついたガラス玉(ビーズ)で、トンボの目に似ていることから「とんぼ玉」と呼ばれるようになった。江戸時代に南蛮貿易を通じて日本に伝えられ、長崎や江戸などで、主に玉かんざしや根付けなど装飾品として使われていた。

千葉県は縄文時代からメノウやヒスイなどの石を使った装飾工芸品が多く作られてきたという歴史があるため、江戸に伝わったとんぼ玉の生産者で千葉県に住んでいる方は多い。

1979年から千葉市でとんぼ玉を作り続けているのが森谷糸さん。2002年に千葉県の伝統工芸品に指定され、全国各地で展覧会や展示会に出展してきた。海外などで作られる安価なガラス玉にはない魅力を持ち、多くの人に普段から使ってもらえるような作品作りをしたいという思いが強い。

その森谷さんが、成田のディスプレイ用に制作し、展示したのが「ペット用のアクセサリー」だ。いまやペットは家族の一員。かわいいペットと、その飼い主のお揃いのアクセサリーを作り、若い世代の人たちに興味を持ってもらおうという狙いからだ。

ディスプレイにはお揃いの首飾りのほか、バッグチャーム、髪留めなども展示したところ、ディスプレイの注目率は飛躍的に高まった。また、外国人のためにとんぼ玉を「Tomball」とした。これはとんぼを表す「Tombo」と、玉の「ball」とを合わせた造語だが、直訳の「glass beads」ではなく、日本独自の文化を表すものとしてあえて命名した。

◆木象嵌はスマートフォンに

同時に取り組んだのは、木象嵌(ぞうがん)。色合いの異なる木片を地板に空けた穴に埋め込んで、模様や絵画を描く。内山春雄さんは同じく木象嵌の職人だった父の後を継ぎ、「楽堂」の号で37年間、木象嵌の製造を続けている生産者だ。その緻密で精巧な製作技法は「神業」ともいわれている。サクラやカキ、クスなど約40種類の天然木材を使い、自然の木の色だけで描かれる鮮やかな絵が特徴だ。

内山さんは、現代のビジネスシーンで実際に使用できるものとして、スマートフォンケースとICカードケース、名刺入れを新たに制作した。そしてパソコンのキーボードやマウスなどとともに、千葉県庁中庁舎1階の待ち合わせスペースのディスプレイに展示したところ、メディアに取り上げられるなど効果テキメンだ。

◆グラスかんざしの花が咲く

千葉県庁のディスプレイに一緒に展示したのは、江戸つまみかんざし。羽二重と呼ばれる薄い絹の布の小片をつまんで、花や蝶などの形を作る「つまみ細工」で、髪飾りに成形したもの。15歳から修行を重ねて、つまみ細工の技を極めた穂積実さんは、“イマドキ女子”を輝かせてくれるカワイイ小物として「グラスマーカー」と「スカーフピン」を開発した。

グラスマーカーは流行の女子会や、結婚披露宴などのパーティで、自分が使っているグラスにつけるマークのこと。それを、つまみかんざしの技術を応用し、おしゃれな女子向けに仕上げたものだ。商品名は「グラスかんざし」。3月の半ばにとんぼ玉と入れ替わるように成田空港にディスプレイされた。

これら3つの取り組みは、伝統的工芸品を、現代人のライフスタイルに合わせて、これまでとは違った利用シーンで提案したものだ。つまり、匠と現代の融合。匠の生産者が新しい分野の商品開発を行うことで、新たな市場を開拓するのにつながる。そして、若い人たちにその技術や分野に興味を持ってもらうことにもなる。

なにより、多くの伝統的工芸品の生産者に新たな“気づき”を感じてもらい、業界の活性化に結びついてもらう。こうした3つの狙いが凝縮されたものだ。

千葉県では、今回のディスプレイは庁内外からの評判もよいため、今後も新たな伝統工芸品と一緒に様々な提案をしていくという。

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2012年7月号に掲載されたものです

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