コラム / 注目!地域ブランド | 2014年12月14日 日曜日

東京湾の干潟が作る最高の味~船橋三番瀬海苔(千葉県船橋市)

東京湾東部に残された唯一の干潟、三番瀬。船橋市の南方、浦安と習志野にはさまれるように広がったこの干潟に、昔ながらの製法を守り養殖されている海苔が「船橋三番瀬海苔」。東京の高級寿司屋や料亭などで高い評価を得ている銘品だ。
船橋三番瀬の海苔は、磯の香りが強くて、甘みと味わいが深く、食感もよい。口に含むと、まるで味がついているのではないかと勘違いするくらい、口の中に香りと味が広がる。そしてお茶やお吸い物の上にのせて軽くかき混ぜると、バラバラと自然にほぐれ、自然に育ったままの小さな海苔に分かれる。まさに、自然が作り出した絶品だ。この最高級の海苔である理由は主に4つある。

1つは海苔の種。自然に生えた海苔の原藻を選び抜き、種付け(陸上採苗)に使用している。

2つ目は、東京湾には、多摩川、荒川、江戸川などの一級河川が流れ込んでいて、ミネラルなどの栄養素が十分運び込まれていること。だから、江戸時代から東京湾は屈指の漁場として有名だ。

3つ目は、湾の奥で海流が穏やかという自然環境も、海苔の養殖には適した条件になっていること。そして4つめは、干潟の海でしかできない「竹ひび式」という方法で養殖していることだ。

■三番瀬は江戸前のゆりかご

三番瀬は、木更津市の盤州干潟、習志野市の谷津干潟と並び、東京湾奥部における数少ない干潟(浅海域)。ここは魚や鳥などの貴重な生息地になっている。

三番瀬ではスズキ、カレイ、イワシなど100種を超える魚介類が生育している。ちなみに、スズキの年間漁獲量は約1100トン。アサリは同1000トンで有力な漁業地になっている。これらは「江戸前」の魚介類として珍重され、寿司などの飲食店やスーパーなどの店頭で高い人気を得ている。

かつては汚染が問題になったこともあったが、現在は浄化が進み、海の底は砂地が広がり、竹で数メートルの深さにある海底をつつくと、さらさらとした砂が覆っているのがわかる。だから、東京湾の魚は問題なく食され、高い評価を得ているというわけだ。

三番瀬は東京湾に住む魚の産卵場になっているほか、成魚に育つ場所、つまり東京湾の「ゆりかご」としての役割を担っている自然環境上でとても重要な場所。

魚がいるところには、鳥も集まる。三番瀬にはシギ、チドリ、カモなどの鳥が数多く集まる。現在、鳥類は89種類が確認されているが、四季折々の渡り鳥が休息や採餌のために三番瀬を訪れている。

このように三番瀬は、かつての汚染された東京湾のイメージとはまったく異なり、鳥や魚が住みついている自然豊かな干潟なのだ。

千葉県では、自然豊かな三番瀬を守り、三番瀬の知名度の向上とイメージアップを図り、三番瀬のブランド力のアップに取り組むために、「三番瀬再生計画」を平成18年に設定し、様々な事業に取り組んできている。

この基本となっているのは「自然環境の再生・保全」や「人と自然とがふれあえる三番瀬」「豊かな漁場としての三番瀬の再生」および「三番瀬の魅力がわかる広報」の4つだ。

■江戸時代には徳川家の食膳に

平安時代から三番瀬に近い浜辺に人が住みつくようになってきたが、本格的な漁業が行われるようになったのは、徳川家康が江戸に入府した江戸時代と言われている。江戸時代には三番瀬は「御菜浦(おさいのうら)」と呼ばれる天領で、ここで漁獲された魚介類は徳川家に献上され、将軍家の食膳に上っていた。

海苔は古くから天然に成育しており、それらを採って食されていたようだが、江戸時代になると海苔の養殖技術が確立し、和紙の製紙技術を応用して紙状に加工したものが登場した。これが、現在市販されている板海苔の原点だ。三番瀬で採れた海苔で作られた板海苔が、「江戸前の海苔」として人気を集めた。そして「竹ひび」を使った本格的な海苔の養殖が行われたのは、江戸末期から明治時代にかけてである。

三番瀬で行われている「竹ひび式」と呼ばれる養殖方式とは、沖合いに竹の支柱柵を立てて網を張り、そこに海苔の種を付けるという昔から伝わる方法。干潮時には網に付いた海苔が海面の上に出て日光をたっぷり浴びる。満潮時になると海面の下に浸り、海の養分を十分に吸い込む。こうした自然の潮の干満差によって、海苔が成長する。干潟という特性を生かした養殖方法なのだ。

もちろん、網の張り方や高さによって海苔の生育は大きく変わってくる。また、海苔はある程度、気温が下がらないと育たないが、気温が下がりすぎてもダメ。天候や水温を読み、種を付けるタイミングをはかる。それでも温暖化の影響を受けたり、せっかく育った海苔が強風で流されたりと思うようにいかないことも多い。潮の流れや天候、水温を読んで育てるのは、熟練した漁師の経験と勘によるものだ。

■上4等級だけを出荷

漁師たちの海苔への思い入れはこれだけではない。一般的な海苔の養殖の場合、漁場の7~8割程度をフルに使って行うのが普通だが、三番瀬で10分の1程度の場所しか使っていない。こうすることにより、海苔に十分な栄養をいきわたらせることができるという。生産性とは相反するやり方だが、これが漁師のこだわりなのだ。

このように育てた海苔から、さらに上4等級以上のものだけを選んで「船橋三番瀬海苔」として商品にし、販売している。それは採取した海苔の6割程度にしかならないという。ここには産地表示はもちろん、生産者の名前を表示して販売している。

ちなみに、パッケージに詰められる海苔の生産者は10人足らず。全員が品質基準を厳守する旨の委任状を組合に提出し、お互いに目を光らせながら、みんなでブランドを守り続けている。

関連サイト:船橋三番瀬海苔(ふなばし産品ブランド協議会)

(文責:田中章雄 ブランド総合研究所代表取締役社長)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2012年9月号に掲載されたものです

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