コラム / 注目!地域ブランド | 2015年6月15日 月曜日

神楽でまちおこし・市内に22の神楽団! 安芸高田市

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神楽の新舞発祥の地である安芸高田市には、22の神楽団が活動を続けている。全国屈指の神楽どころとして、いま勇壮華麗、スピード感にあふれる神楽を使ったまちおこしに取り組んでいる。

舞台中央の積乱雲のような白煙の中から、大鬼・酒呑童子とその手下の鬼が現れた。ピンと張り詰めたように緊張が走る客席。そして、山伏の姿に身を変えていた源頼光と四天王が登場。きらびやかな衣装をまとった四天王がクルリクルリと華麗に舞いながら鬼と刃を交え、ついに鬼を倒した。そのとき、1000人を超える観客の神楽ドームに拍手が割れんばかりに響き渡った―。

広島県北西部(芸北地方)に位置する安芸高田市では、秋の収穫を神に感謝するため、太鼓や笛の音に合わせて金銀の刺繍を施した豪華な衣裳を身にまとって優雅で激しく舞う。この神楽を市民は最大の楽しみとし、また、地域の伝統芸能として人から人によって舞い継いできた。現在も市内で活動している神楽団の数は22団にもなる。

平成10年には安芸高田市美土里町に神楽の専用舞台「神楽ドーム」と屋内の小劇場「かむくら座」が完成し、ここで、22の神楽団が交代で年間150回もの神楽公演を行っている。毎週日曜日の公演には、最大2000人が収容できる神楽ドームが満員になることもある。

神楽ドームの周辺は天然ラドン温泉と格子づくりの旅籠屋、田舎料理屋、茶店など、昔懐かしい町並みが「神楽門前湯治村」として整備されており、神楽の合間には大勢の客で賑わう。

■石見神楽から/スピードの新舞へ

神楽の起源といわれるのが「天岩戸(あまといわと)伝説」。これによると、太陽の女神天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸の中に籠ってしまわれたとき、これを引き出すべく神々が協議して、天鈿女命(あまのうずめのみこと)が岩戸の前で乱舞し、他の神々はこれを大いに楽しんだ。この騒ぎが気になった天照大神が岩戸をそっと開けたとき、手力男命(たちからおのみこと)が岩戸をこじあけて、女神を外に連れ出したという。

つまり、1年のうちで最も太陽の力が弱まる時期に、その太陽と生命が再び力を取り戻すことを願って行う「神が楽しむ」儀式が神楽なのだ。

神楽には、巫女が舞う「巫女神楽」や、獅子舞による「獅子神楽」、伊勢神宮で釜で沸かしたお湯をかけて清める「伊勢流神楽」など、全国に様々な神楽がある。神話や儀式を劇化した「出雲流神楽」が島根県石見地方に伝わり、「石見神楽」となった。さらに、中国山地一帯に古くから伝わる農民信仰などの影響を受けて、江戸時代にこの地で民族芸能として定着した。

ところが、戦後、神楽は進駐軍から国家神道に付随したものとみなされ、厳しい検閲を受けた。神道色の強いものは徹底的に排除され、台本は厳しい検査を受けることとなった。この地で教員をしていた故・佐々木順三氏は、神楽を途絶えさせないようにとの思いから、神楽の改革に取り組んだ。

すなわち、神楽から神道的な要素を取り払い、物語性と娯楽的な要素を強めた新しい神楽に転換することを始めたのだ。

こうして佐々木氏は次々と新しい神楽を創作した。物語性が強く、スピード感と迫力のある舞いを特徴とした佐々木氏の新しい神楽は「新舞」と呼ばれ、芸北地方に一気に浸透していった。なお、安芸高田市では旧舞と新舞の両方が題目に応じて演じ分けられている。

■神楽を舞うために/安芸高田に残る

こうして定着した安芸高田市の神楽は、市民の生活の一部になっている。上河内神楽団の団員の一人である戸田邦昭氏は、32年間ずっと休まずに舞い続けているという。昼間の仕事が終わると、週3日ほど練習に汗を流す。年間30~40回ほど神楽公演に出かけるといい、まさに神楽中心の生活になっている。3人の子どもたちも「子ども神楽」に取り組んでいるという戸田氏は、神楽の魅力をこう語る。

「神のかっこよさ、鬼の力強さに憧れて、何のためらいもなく小学校1年生のときに神楽の世界に飛び込みました。自分たちが舞う神楽を観に来てくれた会場のお客さんと、舞台の我々が神楽を通じて一体となって、楽しい時間が共有できるのがいい。子どもたちに神楽を強要するつもりはありませんが、人生の選択肢の中に『神楽を舞うために安芸高田に残る』と言ってもらえれば、親としては最高です」

この言葉からも、いかに神楽が市民の生活そのものに深く根づいているかがわかる。だからこそ、安芸高田市では、「神楽」を観光や産業などの活性化に結びつけようと考えている。

「もっと県外から神楽を見に安芸高田市に来てもらいたい。神楽の魅力を全国に広めるために、これからしっかり情報発信していき、『神楽観賞のために広島に来た』と言う人が増えるようにしたい」と安芸高田市企画振興部長の竹本峰昭氏は語る。その一環として、1月19日には東京・日本橋で2回目となる東京公演が開催される。 安芸高田市が神楽のように軽やかに、そして優雅に舞い続けるのを期待したい。

関連サイト: 神楽門前湯治村

(文責:田中章雄 ブランド総合研究所代表取締役社長)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2013年1月号に掲載されたものです

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