コラム / 注目!地域ブランド | 2015年6月21日 日曜日

窓口改革で住民サービス向上へ ~弘前市役所

まるで銀行や旅行代理店のように、笑顔で住民にサービスする。
弘前市役所は総合窓口システムや、コンシェルジュの導入などによる「窓口改革」を行い、住民からの評判が上昇している。“お役所”から“お客様”へ―。いま行政の窓口が変わりつつある。

「おはようございます。今日はどんなご用件でお越しですか?」
弘前市役所の市民課に訪れると、「笑顔でご案内します」という大きな丸いバッチをつけた総合案内コンシェルジュが笑顔で問いかけてくる。

「転入してきたのですが・・・」と切り出すと、「それではこちらへどうぞ」と番号カードを渡されて案内された先は、①から⑩までの大きな番号を付記した赤いりんごのマークがついたカウンターの前だった。

待合用のイスの前の天井から釣り下がっている大きなディスプレイに自分の番号が表示されると、「△△番のお客様、○番までどうぞ」と声をかけられる。にこやかな笑顔の職員が出迎えるカウンターに座って、丁寧な説明を受けながら書類に記入していると、転入に必要なすべての手続きがその場で完了した。

■住民は本人確認と受け取り署名だけ

これは2010年4月から取り組んできた弘前市役所の「窓口改革」によって、大きく変わった市役所の窓口の様子だ。改革の1つは「総合窓口」の設置だ。

市役所に来る市民(弘前市役所では「お客様」と呼ぶ)は、用件によっては複数の部署が絡み、1つの部署で解決できないことが多い。例えば他の市町村から引っ越してきた場合には、転入届、住民票の発行、印鑑証明、児童手当など、様々な届けが必要となる。そのため、市民は1つの窓口が終わると、次の窓口へと何度も何度も手続きをしなくてはならず、そのたびに必要書類を書かなくてはならない。時には提出のたびに長く待たされてしまうこともある。

そこで、弘前市は市民の利便性向上を図るため、住民票や戸籍関係書類、印鑑証明、税証明などの証明書を一元的に発行する「総合窓口システム」を7月に導入した。「総合窓口」では、市民が住民票、印鑑証明、戸籍関係、税証明など必要な書類を伝えれば、市職員が市民に代わって申請する書類をシステムを使って作成する。市民は免許証など本人確認ができるものを提示し、受け取りの署名をするだけでよく、会計をそれぞれの窓口で済ませる。

また、大方の業務は総合窓口で手続きが終了するが、転入、出生、婚姻届などに伴って、児童手当などの手続きが必要になる場合は、関係する各課に住所、氏名などの電子データがシステムから自動的に送られる。市民は関係する課に移動しなければならないが、行った先で何度も同じような申請書に記入する必要がなくなった。 何かと面倒だった手続きを、1ヵ所で簡単に出来る「ワンストップ・サービス」にするというのが「総合窓口システム」の目的だ。

青森県内の自治体で初めての導入となった総合窓口システムは、愛媛県松山市、埼玉県鳩ヶ谷市などの先進事例をはじめ、導入を実施・検討している自治体が全国各地で増えてきている。

ところが、弘前市では支所間ともやりとりができるようにしたほか、「番号案内表示システム」を導入するなど、独自のシステムとして開発を行ってきた。番号案内表示システムとは、番号札を発行し、大型のモニターと音声で番号を呼び出して対応する仕組みで、待っている人数がわかるようにし、窓口での混雑解消や順番待ちのいらいらをなくすことにつながる。また、番号で呼び出すことでプライバシーを保護する効果もある。

■コンシェルジュが担当課まで誘導

そしてもうひとつの特徴が昨年10月のコンシェルジュ(フロアマネージャー)の導入だ。

市民課の職員がシフトを組み、常に3人が窓口のカウンター外に常駐して、来庁者の相談に乗る。時には総合窓口や担当課まで同行して、手続きなどをサポートする。「来庁者が気軽に安心して手続き等ができるように、今日も笑顔で常にお客様目線で親切・丁寧に、お客様が満足する最高のサービスを提供するため」(菊地佳子課長)に、庁内の横断的連携を図って10月にサービスを開始した。

例えば高齢者や歩行が困難な方に対しては、コンシェルジュが担当課に電話連絡し、担当職員のほうから出向いて相談にあたることにしている。また、複数の課にまたがるケースでは、コンシェルジュが担当課まで同行することや、最初の担当課職員が次の担当課まで同行し、説明のサポート役となることもある。常に住民の立場に立って、きめ細かな対応を心がけているという。

 

■市民は歓迎 待ち時間も短縮

これらの評判は上々だ。総合窓口システムや番号案内表示システムの導入に加えて、窓口の増設や証明と届出の窓口分離等の改善を行った結果、お客様からは、「いちいち申請書に書かなくてよいので助かります」とか、「手続きが簡単でわかりやすくなりました」などの意見が多く寄せられているという。また、コンシェルジュサービスについても、「親切に案内してくれて本当にありがとうございました。大変気持ちよく用事をすませることができ、感動しました」との意見が寄せられた。また、実際に申請に要する時間や待ち時間もかなりの短縮効果が生まれているという。

これらの窓口改革を推し進めてきた葛西憲之市長は、「おおむね好評をいただいている。今後も市民サービスの向上のため、お客様の満足度を高めていきたい」と成功に胸を張る。

かつては「お役所」と言われた役所の窓口だったが、いまでは「お客様」の立場でサービスを展開する。日本の行政サービスが「世界一」と自慢できるように、窓口業務がその先導となって変わり始めている。

関連サイト: 弘前市

(文責:田中章雄 ブランド総合研究所代表取締役社長)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2013年2月号に掲載されたものです

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