コラム / 注目!地域ブランド | 2015年7月3日 金曜日

欧米でも注目集める越前和紙 ~福井県越前市

1500年の歴史を誇る越前和紙が、いま高級ブランドとのコラボでディスプレイに利用されるなど、欧州で注目を集めている。「越前和紙の里」の職人による世界への魅力発信の挑戦は続く。

◆百貨店のディスプレイにも採用

昨年5月、東京の日本橋高島屋の入口を入った正面の大きな吹き抜けになっているホールに、越前和紙を使った巨大なオブジェが登場し、多くの買い物客の注目を集めた。作ったのは杉原商店社長である「和紙ソムリエ」の杉原吉直氏(9代目杉原半四郎)。ホールだけではない。高級ファッションブランドのショーウインドウにも同氏の越前和紙が壁面などに使われ、まさに越前和紙一色となった。

この時、日本橋高島屋8階のエクセレントルームでは、越前和紙「美と芸術」の世界展と題した展示会が開催されていた。ここでは日本古来の和紙の美しさと、技術の素晴らしさを伝える多彩な作品が広く紹介されていた。

照明、うちわ、バッグ、ステーショナリーなど越前和紙を使うことで、温かみがある独特なデザインと質感のあるまったく異なった商品へと変化を遂げる。また、アイパッドカバーやスマートフォンカバーなども登場した。

◆越前市は和紙の町

1500年の歴史を誇る越前和紙は、室町時代には公家・武士階級の公用紙として使われ、江戸時代には日本最初の藩札として発行された福井藩札に使われ、明治新政府が各藩の藩札に代わって発行した日本統一紙幣「太政官札」にも採用されたという日本を代表する和紙のひとつだ。

その産地である越前市には「越前和紙の里」があり、岡本川に沿った五箇地区には和紙業者が軒を並べ、紙漉き職人が多く集まっていて「紙漉きのまち」と呼ばれている。また、平成18年には「美しい日本の歴史風土100選」に選ばれるほど、美しく風情のある街並みが残っているのも特徴だ。

杉の大木が立ち並ぶ岡太(おかもと)神社・大瀧神社には、この里に紙漉きの技を伝えたとされる「紙祖神」が祀られている。毎年、5月には神体山である権現山の頂上にある奥の院に祀られたご神体を、ふもとの里宮にお迎えし、和紙の里である五箇地区を巡幸して再び上宮にお送りするという「神と紙の祭り」が、執り行われる。福井県の無形民俗文化財にも指定されているこの祭礼からも、いかにこのまちと紙が強く結びついているかがうかがえる。

◆新しい挑戦で、新しい進化へ

ところが、ふすま紙や書道紙の需要減少に伴って、日本全国の和紙産地はいずれも衰退の危機に直面している。これは日本を代表する和紙産地の越前和紙でも同じだ。需要が少なくなれば、どんなにいい和紙を作っていても、産地としては存続できない。

そこで、新しい試みで可能性を広げているのが和紙ソムリエの杉原氏だ。「伝統工芸品は過去にしがみつくだけではダメ。新しい需要と可能性を見つけなければならない」と果敢に挑戦を続けている。その杉原氏が注力しているのは、素材としての和紙の可能性を追求し、発信していくことだ。 前出のようなディスプレイをはじめ、建築用の大規模な和紙スクリーンや光壁などには、その独特の雰囲気と柔らかな光の美しさを演出することができる。

一方、インクジェットプリンターで印刷する高画質の写真用紙を商品化しているほか、和傘の紙や小物など、これまでとは異なった分野に積極的に挑戦し続けている。

また、越前漆器と融合させた「漆和紙(うるわし)」の開発も手がけた。これは、和紙に漆を塗ったもので、漆の堅牢さと紙のしなやかさが加味され、色や手触りに懐かしさが感じられる。

そのほかにも、卓上小物やテーブルウエア、照明などの商品化を進めるほか、ドイツ人デザイナーと組んで、パリのホテルの部屋の照明としても展開中だ。 こうした新しい取り組みを積極的に展開することによって、越前和紙は日本国内だけではなく、パリ、ミラノ、ロンドンなどヨーロッパの主要都市でもその独特のイメージと高い品質に注目が集まっている。

伝統工芸品は昔からの技術を守り続けるだけでは、継続し続けていくことができない。職人の技術がいかに優れていても、使ってくれる人がいなければ、その技術を生かすことができない。まったく新しい市場で、新しい挑戦をすることによって、その技術の進化と業界の発展につながる。

いま、福井県和紙工業協同組合では、越前和紙を学ぶ若者を受け入れるため、宿泊施設「越前長屋」と、体験施設「越前てわざ工房」を設置している。紙漉きの後継者を育てるため、越前和紙伝統工芸士が和紙の製造過程を体験を通じて教えているほか、デザイナーなどが長期滞在して作品作りに取り組む際の拠点として活用されている。

越前和紙は1000年以上もの優れた保存性と、強靭で柔らであるのが特性。その技術と業界もまた、これから1000年以上先の未来へと受け継がれていくような取り組みが求められている。

関連サイト: 杉原商店WASHIYA

(文責:田中章雄 ブランド総合研究所代表取締役社長)

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2013年3月号に掲載されたものです

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