コラム / 勝手にケンミン創生計画 | 2016年2月14日 日曜日

佐賀県(46位) 陶磁器は世界が評価。タイで佐賀ブーム!

ヤマトタケルノミコトが楠の木が生え盛る九州の西の地域を「栄の国」と呼んだ。それが「佐賀」という名称の由来だという。実際、佐賀県は耕地利用率が20年以上全国1位であるなど、農業が盛んな県である。

イチゴや梨などの生産量は多く、佐賀牛の評価も高い。水産業も盛んで、有明海のシンボル「ムツゴロウ」や、映画エイリアンの怪物そっくりのワラスボ、黒褐色の色と艶が特徴の佐賀のりなどがある。

食品では全国的にも有名な菓子が多い。鎖国時代に長崎・出島に荷揚げされた砂糖は、長崎から佐賀、小倉へと続く長崎街道を通って京都や江戸に運ばれた。

「シュガーロード」とも呼ばれる街道沿いでは砂糖を使った菓子が数多く生まれた。小城市の小城羊羹や、佐賀市の丸ぼうろ、唐津市の松露饅頭など伝統的な菓子が残っているほか、江崎グリコの創業者江崎利一氏、森永製菓の創業者森永太一郎氏は共に佐賀県出身である。

ところが、佐賀県の「食事がおいしい」というイメージは40位、「土産や地域産品」は44位と低い。隣国である長崎県、福岡県の食への評価が高いだけに残念だ。

◆世界的に注目集める陶磁器

佐賀県の産品の中で、世界的に知名度が高いのは陶磁器で、有田、伊万里、唐津など著名な産地が多い。江戸時代初期(1610年頃)に有田で良質な陶石が発見されて陶磁器作りが始まった。1640年代には色絵技術が発展し、生産が広まっていった。

積極的に焼き物を生産し、栄えていった有田に対し、1640年頃に鍋島藩が、伊万里市の大川内山と呼ばれる山に囲まれた場所に優秀な細工人や画工を集め、人の出入りを厳しく規制して技術の流出を防ぎながら、高品質な製品を作ることも行った。この地で作られた日本最高品質の磁器は「鍋島焼」と呼ばれ、将軍や朝廷などへの献上用として特別に生産され、珍重された。

その後、装飾性の高い飾り皿や大鉢などは各国の万国博覧会に出展されたり、欧州の貴族等に愛用されたりするなど、世界中で人気が高まった。

現在でも有田町や伊万里市は陶磁器の産地として栄えており、重要な地場産業となっている。ところが1990年代のピーク時と比べると出荷額はおよそ8〜9割減となっており、産業の衰退が著しい。

しかし、中国産の低価格の商品に押されていた国産陶磁器が、最近見直されてきている。伝統的工芸品としての価値が国内外で再評価されてきているとともに、新たな感性を持った作品や、デザイン性の高い商品などの人気が高まってきている。

また、前出の大川内山地域は、当時の街並みや登り窯などが残る街並みに、今も約30軒の窯元が集まっており、「秘窯の里」として、観光面での評価も高まっている。特に、陶芸作品を使ったカフェやレストランなどを巡る観光ツアーが、熟年層と若い女性に人気のようだ。

■タイでは佐賀観光が大ブームに

国内の女性以上に評価が高まっているのが、タイからの観光客だ。きっかけは佐賀を舞台に撮影されたタイのドラマや映画が放映され、人気を博したこと。

タイの有名監督がロケ地を探しているという情報を佐賀県の職員が入手。イカ漁で知られる呼子漁港の写真を手に乗り込んだところ、「タイムライン」のロケ地に選ばれることとなった。映画では佐賀市三瀬村の民宿、呼子朝市や嬉野温泉、祐徳稲荷神社などの観光地が舞台として登場。佐賀牛やイカの活き作り、イチゴなども登場する。

その後、タイの国民的スターが主演するドラマのロケ地にも佐賀が選ばれ、「LINE」のタイでの動画アプリ開始記念で佐賀を舞台にしたドラマが配信された。また、タイのドラマ「STAY Saga~わたしが恋した佐賀~」が撮影・放映されるなど、佐賀を舞台にした映画やドラマなどが後を絶たない。
さらにタイの新婚旅行用雑誌が約80ページを割いての佐賀を特集するなど、タイ人にとっては佐賀は「あこがれの地」となっている。

今では、東京や京都、北海道に続く、第3の訪問地として、タイでは佐賀が人気観光地になっており、2015年の佐賀県へのタイ人旅行客数は、前年比4倍以上に急増している

■国内の人気はふるわない・・・

タイからの人気が高まっている一方で、日本国内からの評価はなかなか高まってこない。

佐賀県は産品購入意欲度(食品を除く)は全国5位と高い。もちろん陶磁器の人気によるものであるが、その一方で魅力度の順位は46位、観光意欲度は45位と振るわない。その原因は、20代と60代からの食への評価が高くないことにありそうだ。つまり、佐賀県内の陶磁器と、シュガーロードや農水産業との結びつきが弱く、熟年層と若い女性のハートを攻略できていないからではないか。

さらに、地元の九州居住者からの観光意欲度が低いことも問題だ。東北・北海道に居住している人のうち15%は佐賀県に観光に「ぜひ行ってみたい」と答えているが、九州・沖縄居住者は3%に満たない。

食など身近な魅力を磨きあげ、近隣から手軽に訪れられるようになれば、集客拡大につながるというわけだ。こうして活気が生まれれば、日本全国からの集客やイメージアップにつながる。

「佐賀の人が通った後にはぺんぺん草も生えない」という言葉があるが、これが佐賀藩時代の厳しい財政下で大名自ら実践した倹約の精神を揶揄したものだ。確かに今の時代も倹約は重要ではあるが、一方で地域創生のためには、多くの消費者に魅力を感じてもらえるような投資と思い切った試みも不可欠だろう。

佐賀に訪問したタイの人々が「佐賀は素晴らしい」と感動して帰路につく。国内の人にも佐賀の魅力を伝えるための戦略が期待される。

◆佐賀県の主要項目 (カッコ内は前年度の順位。△は上昇した項目)

  • 認知度       45位(43)
  • 情報接触度    47位(47)
  • 観光意欲度    45位(45)
  • 居住意欲度    45位(28)
  • 愛着度       30位(45)△
  • 産品購入意欲度 43位

◆佐賀県の主要なイメージ

  • 自然が豊か       35位(35)
  • 食材が豊富       27位(36)△
  • 食事がおいしい     40位(41)△
  • 土産や地域産品    44位(29)
  • 伝統技術         12位( 9)
  • 街並みや歴史建造物 45位(38)
  • おもてなしがよい    7位(31)△

 

地域ブランド調査の結果は http://tiiki.jp/news/survey2015 のページに掲載)

執筆・文責:田中章雄 (ブランド総合研究所社長)

(※この記事は、週刊ダイヤモンド2015年12月12日号に掲載したの記事を、筆者が加筆・修正したものです週刊ダイヤモンドの「勝手にケンミン創生計画」はコチラをご覧ください)

 



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