【宮城県】■雄勝硯 おがつすずり

雄勝硯とは?

宮城県石巻市雄勝地区で産出する黒色で光沢がある硬質粘板岩「雄勝石」を用い、雄勝町や仙台市で生産される、石肌の自然模様が美しい硯。


商品・技術の特徴

深みのある光沢と均質な粒子が特徴の黒色硬質粘板岩は、純黒色であり、圧縮や曲げにも強く、なおかつ吸水性が低いため、長い年月でも変質せず、非常に耐久性が高い。主に一般用硯、学童用硯になる「角型硯」や、石の形を活かした「自然石硯」が生産されているほか、書道家やコレクター向けの彫刻硯、特殊硯なども作られている。現在、雄勝町では年間150万枚の硯が生産され、全国の生産量の90%を誇る。品質では中国で名硯といわれている「端渓硯」に匹敵するともされる雄勝硯は、市場シェア、品質面ともに、日本一の名硯といっても過言ではない。

製造では昔ながらの製法によって、硯工人が一つひとつ丹念に彫り上げている。まず露天掘によって重機等を使って原石を採石。選定した良質の原石を制作する硯の大きさに合わせて切断し、川砂と水で表面の凹凸を洗いながら削って滑らかにする。彫りでは、縁立て(硯の縁を作っていく作業)、荒彫り、仕上げ彫りの三段階に分け、40cmもある大きなのみを肩に当てて、体全体を使って豪快に彫っていく。彫りあげた硯は中磨き、外磨き、仕上げ磨きの3段階に分け、砥石、耐水ペーパーを用いて表面を磨く。最後に漆を用いたつや出し仕上げ、やき仕上げ、あるいは墨を用いた墨引き仕上げによって完成させる。

歴史的背景

雄勝硯の歴史は古く、約600年前の南北朝統一後の室町時代には生産が始まっていたと口伝されている。仙台藩祖伊達正宗が鹿狩りをするために牡鹿半島を訪れた際、硯を献上したところ非常に喜ばれ、褒美を授かったという史実もある。また二代藩主忠宗はその技巧に感服し、雄勝硯を作る硯師を仙台藩お抱えとして、硯材を産出する山を「お留山(お止め山)」と称して、一般の採石を禁じたといわれている。

一方、伊達藩の儒学者の田辺希文が明和年間(1764〜1772年)に藩主の命によって撰した「封内風土記(ほうないふうどき)」の中に、「雄勝浜。戸口凡九十五。有ニ市店一而駅也。比地産ニ硯石一。頗雅物也。」とある。つまり、江戸中期には雄勝硯は「雅物」として認知され、名硯としてその名が広まっていたと考えられる。
戦後、1950年代前半には雄勝石を利用した学童用硯の生産が始まり、1955年には硯生産量はピークを迎えた。近年では中国から安価な硯が流入しシェアが低減しているが、その打開策として雄勝石を使った日常的に使える小物やインテリア製品など新しい製品づくりにも取り組んでいる。

認定要件(※伝統的工芸品認定に伴う「告知」より)

【技術・技法について】
1.使用する石材は「石きず」、「ひび」、又は「割れ目」のないものとすること。
2.「縁立て」には、「彫りのみ」及び「小丸のみ」を用いること。
3.「荒彫り」にあっては、「くりのみ」を用いる「くり彫り」をすること。
4.「荒彫り」した後、手作業による「仕上げ彫り」をすること。
5.「加飾彫り」をする場合には、「毛彫り」(細い線で模様や文字を彫る作業)又は「浮き彫り」
 (平面に模様や形が浮き出すように彫り上げる作業)とすること。
6.「仕上げみがき」には、「砥石」を用いること。
7.仕上げは、次のいずれかによること。
(1)「漆巻き」を必要とするものにあっては、「漆巻き」をした後、「つや出し仕上げ」又は
  「やき仕上げ」をすること。
(2)「漆巻き」を必要としないものにあっては、「墨引き仕上げ」をすること。


【原材料について】
1.石材は、雄勝石とすること。
2.漆は、天然漆とすること。

・事業者数:17業者

事業者数:17業者

従業員数:43名

主な事業者

癌V村製硯
牛kエ頼母硯店

業界団体

雄勝硯生産販売協同組合
〒986-1333 宮城県石巻市雄勝町雄勝字寺53-1 雄勝町インフォメーションセンター内Tel. 0225-57-2632

昭和45年設立

出荷額 : 2億円

その他

*昭和60年に経済産業大臣により、「伝統的工芸品」に指定されている。
*経済産業省が認定する「伝統工芸士」は3名。
*日常生活に使える小物やインテリア製品のブランド「OGATSU-STONEクラフト」を立ち上げている。雄勝硯は歩留りが1割以下で残りの9割を廃棄してしまうが、クラフトは原料を無駄なく活用でき、経済的にも注目が集まる。商品はブックエンドや時計、小物入れ、プレートなど。いずれも雄勝石の美しい質感を活かしつつ実用性も兼ね備えた工芸品である。