【福島県】■会津塗 あいづぬり

会津塗とは?

福島県会津地方に伝わる、螺鈿、漆絵、乾漆、蒔絵、花塗など多岐にわたる技法が魅力の日用品漆器。盆や菓子器、椀、文箱、膳など製品群は多様で、高品質であることから、輸出品としての価値も高い。津軽塗や輪島塗よりも早くから盛んとなり、現在の主な産地は会津若松市や喜多方市、南会津町、西会津町、北塩原村、会津美里町となっている。


商品・技術の特徴

ケヤキやホウ、トチなどを木地とした日用品漆器であり、漆で絵を描きその上に金銀の粉や色粉を蒔き付ける「蒔絵」や筆を使って彩漆(いろうるし)で絵を描く「漆絵」、細かい刃物で文様を彫り、できた溝に金箔を刷り込む「沈金」など多彩な技法が特徴である。また、器物全面に下地として錆漆(生漆と砥の粉を混合したもの)を塗り、鋳物のような重厚な仕上がりにする「鉄錆塗」、もみ殻を蒔いて模様を出す「金虫喰塗」、木目の美しい「木地呂塗」、漆の艶をそのまま活かした「花塗」など、多様な技巧も駆使する。加飾は日本人が好む縁起の良い意匠が多く見られる。

一方、木地、塗、加飾の工程をそれぞれ専門の職人が分業で作っていることも特筆すべき点である。さらに塗師は椀などの「丸物木地」と重箱などの「板物木地」に分かれ作業を担う。各工程に特化したプロフェッショナルにより、高品質・高効率の生産が実現している。

歴史的背景

会津に漆産業が本格的に興ったのは天正18年(1590年)に豊臣秀吉の命によって、伊勢より陸奥会津に移封され黒川城主(後の会津若松城)となった蒲生氏郷公が、産業として漆工芸を奨励したことが発端となっている。元々今から約500年前の室町時代、会津を統治していた蘆名氏が漆樹の植樹を奨励し、一帯では漆の生産が発展していた。そこに、氏郷公が伊勢に移る前に統治していた近江蒲生郡日野(現在の滋賀県)から木地師や塗師を招き寄せ、日野で盛んだった漆器製造の先端技術を会津の地に伝承させた。さらに「会津塗大屋敷」と称する教習所を設立し、漆工の養成と技術向上を図ったとされる。その甲斐もあり、漆工の技術が飛躍的に進歩し、漆栽培から加飾まで一貫して担う一大産地となった。

江戸時代になると、出羽国山形から3代将軍徳川家光の異母弟である保科正之公が入封し、会津藩初代藩主となり、漆の木の保護育成を図った。また、歴代藩主は技術革新に注力し、国内のみならず、中国やオランダなど海外へも輸出される産業に発展した。

しかし、幕末の戊辰戦争で会津藩は官軍の総攻撃を受け、会津漆器も壊滅的な打撃をこうむることになる。会津の職人らは戊辰の戦火により焼野原となった郷土で漆器産業を再興するために尽力。明治29年には鈴木治三郎による鈴木式ロクロが出現し、同31年には会津漆器徒弟学校が設立され、生産量が増大。輸出も盛んになり、再び日本有数の漆器の産地として国内外にその名が知れ渡ることになった。

近年になり売上高の低迷、後継者育成などの課題を抱えているが、新製品の開発、新たな漆の開発に加え、会津漆器技術後継者訓練校を開校し、若い担い手の育成にも積極的に取り組んでいる。

認定要件(※伝統的工芸品認定に伴う「告知」より)

【技術・技法について】
1.下地造りは、次のいずれかによること。
(1)渋下地にあっては、柿渋に炭粉、松煙又は油煙を混ぜ合わせたものを塗付しては研ぎをすることを
  繰り返した後、柿渋を塗付すること。
(2)さび下地にあっては、生漆に砥の粉を混ぜ合わせたものを塗付すること。

2.上塗は、「花塗」、「きじろ塗」(透き漆を塗って素材の木目を生かす塗り方)または「金虫くい塗」とすること。

3.加飾をする場合には、次のいずれかによること。
(1)消粉蒔絵(漆で文様を描いた上に消粉(金箔を粉末化したような微細な蒔絵粉)を蒔き付着させるもの)
  平極蒔絵(非常に微細な地金の粉末を蒔くもの)、丸粉蒔絵(丸粉という金や銀の地金をヤスリでおろし丸
  みをつけた金銀粉を蒔き付けるもの)、消金地(消紛を塗りの表面に蒔き詰めたもの)及び朱磨
  (黒漆を塗り、乾燥後その上に透明な漆で絵を描いて朱の粉を蒔き付ける技法)にあっては、金粉、銀粉、
  朱の粉その他の粉を蒔いた後、精製生漆を繰り返し「すり漆」すること。
(2)錦絵にあっては、雲形を描くこと。
(3)会津絵にあっては、檜垣を描いた後、ひし形の箔押しをすること。
(4)鉄さび塗にあっては、生漆にさび土等を混ぜ合わせたものを用いて絵描きをした後、地の粉及び砥の粉又は
  これらにベンガラを混ぜ合わせたものを蒔いてみがくこと。
(5)色粉蒔絵にあっては、色粉を蒔いた後、ろうを付けた和紙を用いてみがくこと。
(6)沈金にあっては、「のみ」を用いて彫り、精製漆をすり込んだ後、箔押し又は粉蒔きをすること。


【原材料について】
1.漆は、天然漆とすること。
2.木地は、ホオ、トチ、ケヤキ若しくはセン又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。

事業者数:196社

従業員数:1126名

主な事業者

巨ワ笠漆器店
且O義漆器店
株猪リ屋漆器店
拒蜥ヒ漆器店
兜汾シ惣兵衛商店
大森漆器工房

業界団体

会津漆器協同組合
〒965-0042 福島県会津若松市大町1-7-3
Tel. 0242-24-5757
昭和26年設立

出荷額:約85億円

その他

*昭和50年に経済産業大臣により、「伝統的工芸品」に指定されている。
*経済産業省が認定する「伝統工芸士」は45名。
*地元の公共施設やホテル、料亭、温泉旅館、小中学校などでは積極的に会津塗食器を使用する動きが広まっている。
*食器洗浄器や乾燥機にも対応できる製品の開発も進む。
*会津塗をさらに発展させる意欲を持つ若手の工芸家の活動も盛んである。
*特に会津塗の新ブランド「BITOWA」に注目が集まる。同ブランドはデザイナーの塚本カナエが2006年に興したもので、400年の会津塗の伝統に現代的な美意識や生活スタイルを加味し全く新しい漆器を生み出す。ホテルライクで上質な生活を提案する「BITOWA」、日常をエレガントに彩る「BITOWA modern」、特注ライン「BITOWA order」の3つの軸を中心に展開。ホームページは日本語版のほか、英語版、ドイツ語版を用意し、世界にも積極的に発信している。