【福島県】■奥会津編み組細工
      おくあいづあみくみざいく

奥会津編み組細工とは?

奥会津地方の山間部で採取されるヒロロや山ブドウの皮、マタタビの蔓などの植物素材を用いて手編みされる手さげ籠や炊事用の笊(ざる)。積雪期の手仕事として伝承され、主な産地は福島県大沼郡三島町であり、高齢者を中心に工人が一つひとつ丁寧に制作している。


商品・技術の特徴

奥会津編み組細工は、主にヒロロ細工、山ブドウ細工、マタタビ細工の3種類に大別される。 ヒロロ細工は奥山の沢沿いなどの湿地帯の自生する野草の菅であるヒロロを材料とするもので、ホンヒロロとウバヒロロの2種類がある。繊維は強く、軽量かつ柔軟で、細く綯うのに適した素材。レース編みのような繊細な仕上がりが特徴で、手提げ籠やバッグなどが作られている。

山ブドウ細工は蔓性植物であるヤマブドウの皮をなめして、それを素材に作る手提げ籠や抱え籠、菓子器。深い雪に埋もれるヤマブドウの皮が材料として最適とされ、6月頃に採取する一枚皮を原料とする。強靭であり、使い込むごとに艶が出る質感が魅力である。

マタタビ細工は蔓性植物のマタタビの成熟した1〜3mの肉厚の枝を材料として作られる炊事用の笊などである。積雪地帯のマタタビが良質とされ、奥会津山間部では優良なものが多く採取できる。マタタビから作られた笊は水切れが良く、水分を含むとしなやかになり手を傷つけにくいことが特徴である。

工人は材料の採取から制作まで一手に担う。夏場に材料を野山で採取して乾燥させておき、冬になってからその材料を使って手仕事で作業をする。ただし工人の高齢化に伴い、山奥での作業が困難な場合もあり、周囲が協力して採取を手伝うこともある。また、ヤマブドウなどの材料が不足してきたため、栽培にも取り組み始めている。

歴史的背景

奥会津編み組細工の歴史は縄文時代まで遡ることができる。三島町で発掘された縄文時代後期の荒屋敷遺跡からは縄の籠や編み組などの断片が出てきており、およそ2500年前の縄文時代から編み組の技術や技法が存在したことが明らかになっている。

また、「会津農書写本」(1748年著)には会津地方で野草の縄をもって籠を作っていると記述されており、「東遊雑記」(1788年著)には現在の三島町近郊でヒロロを材料に蓑などの編み組細工が作られたと記されている。また「伊南伊北谷四ヶ組風俗帳」(1807年著)には、マタタビの蔓を細くして笊を作り、ヤマブドウの皮で籠を作ったという記述がみられる。つまり、江戸時代中期〜後期には既に編み組細工により日用品が作られていたことがわかる。こうして奥会津編み組細工は農閑期の仕事として、親から子へ、子から孫へと伝承され、素朴で堅牢な工芸品へと発展していった。

しかし、昭和40年代からは編み組細工の工人が減り、その伝承が危ぶまれる事態となる。そこで、三島町では町主催の展示会を開催するなど支援をスタート。昭和56年には生活工芸運動を始め、工人による編み組細工の町人への指導が開始された。平成13年には「三島町生活工芸運動友の会」が結成され、地場産業に発展させる体制も整備された。編み組細工の技術を修得した町人らは個人で注文をとったり、共同販売施設に納品したりするなどして収入を確保している。

また、原則的に編み組細工は町外では販売しない。全国、海外から三島町に観光で訪れてもらい、町に利益を還元することを目的の1つとしている。

認定要件(※伝統的工芸品認定に伴う「告知」より)

【技術・技法について】
1.「ヒロロ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)ヒロロ縄の太さは2ミリメートルから4ミリメートルとし、10センチメートルの長さに縒り(より)
  が20回以上あること。
(2)底編み及び立ち上げ編みは、「矢羽根編」(材料を斜めに編む手法)又は「棚編」(筏上に編み、
  縦に透かしを入れる手法)によること。

2.「山ブドウ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)ヤマブドウの皮は、鞣しを十分に行い、繊維に沿って切断し、幅の調整を行うこと。
(2)手さげ籠類の底編み及び立ち上げ編みは、「二本飛び網代編」(網代型に交差させ、縦横に隙間が
  できない編み方)又は「笊編」(細かく目のつんだゴザのような編み方)によること。
(3)手さげ籠類の縁巻きは、「矢筈巻縁」(八の字状に巻き真上から見ると矢筈模様(ヘリンボーン模様)
  に見える巻き方)によること。
(4)角箱籠類の底編みは、「四つ目編」(格子状に編む手法)又は「二本飛び網代編」によること。
  立ち上げ編みは、「笊編」によること。
(5)丸籠類の底編みは、「笊編」「四つ目編」又は「二本飛び網代編」によること。立ち上げ編みは、
  「笊編」又は「二本飛び網代編」によること。

3.「マタタビ細工」にあっては、次の技術又は技法によること。
(1)材料の下ごしらえは、皮剥ぎ、割き、扱き、幅揃えを行うこと。
(2)米研ぎ笊の底編みは、二本の材料を一組とする「二本飛び網代編」で編み、一本の材料で
  「二本飛び網代編」により底を丸くすること。立ち上げ編みは、「笊編」によること。
(3)小豆漉し及び蕎麦笊の底編みは、二本の材料を一組とする「二本飛び網代編」によること。
  立ち上げ編みは、一本の材料で「二本飛び網代編」によること。
(4)四つ目笊の底編みは、二本の材料を一組とする「四つ目編」によること。立ち上げ編みは、
  「笊編」によること。
(5)籠類の底編みは、二本の材料を一組とする「笊編」によること。立ち上げ編みは、一本の材料で
  「笊編」によること。
(6)製作後は、「寒晒」又は「雪晒」を行うこと。


【原材料について】
1.「ヒロロ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取されたミヤマカンスゲ(別称 ホンヒロロ)、
 オクノカンスゲ(別称 ウバヒロロ)とすること。

2.「山ブドウ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取されたヤマブドウの皮で、二枚皮になる前の
 一枚皮とすること。


3.「マタタビ細工」にあっては、奥会津の山間部で採取された若年の成熟したマタタビの蔓とすること。
 縁の芯の材料はクマゴヅル又は同等の材質を有するものとすること。

事業者数:―

従業員数:163名

主な事業者

特になし。工人は三島町生活工芸館による主要イベント、展示会、出張展示会、アンテナショップなどを通じ販売。

業界団体

奥会津三島編組品振興協議会
〒969-7402 福島県大沼郡三島町名入字諏訪ノ上395 三島町生活工芸館内

Tel. 0241-48-5502

出荷額

約6千万円

その他

*平成15年に経済産業大臣により、「伝統的工芸品」に指定されている。
*経済産業省が認定する「伝統工芸士」は6名。 *年間を通して3回(3月、6月、10月)大きなイベントを実施。展示会に出品された作品は販売もされる。