【新潟県@】小千谷縮(おぢやちぢみ)

@概要(定義・指定要件)

小千谷縮は、新潟県小千谷市周辺を産地とする最高級の麻織物である。「シボ」と呼ばれる細やかなシワによる独特の凹凸とシャリ感、色柄が豊富でさわやかな風合いが特徴であり、糸の段階で緯糸(よこいと)に強い撚(よ)りをかけて糊で固め、織り上げた後でお湯の中で丹念に揉み込むことで、織物が縮もうとしてシボが形成される。この技術が評価され、1975年に国の重要無形文化財に、2009年には日本の染織工芸としては初めてユネスコ無形文化遺産に指定された。苧麻(からむし、ラミー)を原料として、多段階にわたる昔ながらの丹念な手作業によって生産される。
なお、重要無形文化財の指定要件は次の5つである。
1.すべて苧麻を手績みした糸を使用すること。
2.絣模様をつける場合は、手くびりによること。
3.いざり機で織ること。
4.しぼとりをする場合は、湯もみ、足ぶみによること。
5.さらしは雪ざらしによること。
なお、経済産業省の伝統的工芸品として広く生産、流通している小千谷縮(紡績糸、機械織り)製品と、福島県産原料をすべて手作業で糸作りから織りまで行う国指定無形文化財の小千谷縮と 2 種類があることに注意が必要である。


A特徴

一般に「縮」といえば小千谷というほど、古くから小千谷縮は高い評価を受けてきた。この小千谷縮はまず、シボのある麻の生地でシャリ感があることによって、吸湿性に富み、水分発散がよいという特徴を持つ。特に麻布を使った着物と浴衣が小千谷縮の代表であり、涼しげな夏物の衣料として重用されてきた。
紋様はすべて緯糸で織り出されるのも特徴であり、経(たて)糸に玉繭の糸を使用するため、紋様に霞がかかったような印象を醸し出し、表情の柔らかな着物に仕上がる。 なぜ雪深い地で夏物衣料が生産されるかといえば、小千谷の気候風土に関係している。麻糸は湿度が低いと繊維が切れてしまうが、小千谷は冷えた空気と日本海からの湿った空気がもたらす気候が麻織物の生産に最適であり、古来より農閑期の冬仕事として受け継がれてきた。雪の上に反物を広げて干す「雪ざらし」は季節の風物詩ともなっている。
ただし、手績み、手くびり、湯もみ、足ぶみ等、昔ながらの手作りの製法によって丹念に時間をかけて生産されるため、年間にわずか数反しか生産ができない。この希少性も小千谷縮の特徴である。(平成24年度の小千谷縮の生産反数は3反)。

B産地

新潟県小千谷市周辺

C歴史

魚沼地方では古くから農村地域の冬仕事として、自家栽培の麻から麻糸を取り、冬の副業として自給用の麻布が織られてきた。これは「越後の麻布」と呼ばれ、奈良正倉院にも記録が残るなど、1200年の歴史を誇るものである。
17世紀、この越後の麻布に改良を加えたのが、堀次郎将俊であった。絹織物であった明石縮の技法を応用した新しい機織りの技法を伝え、従来の麻布は夏用の衣料としての縮布へと展開した。この縮布は幕府御用達になるなど高い評価を得、全盛期である天明年間(1781~1788年)には、小千谷を含む越後全域で20万反の生産があったとされる。
明治時代以降になると工業化が進み、古来からの技法で生産される小千谷縮はごくわずかな数量となった。そこで、伝統的技法を守るために技術保存協会が設立され、無形文化財の指定やユネスコ無形文化遺産の登録を受けつつ、技術の伝承が取り組まれているところである。

D産業の現状(出荷額、産業人口などを含めて)

小千谷縮は、伝統技術としての価値が認められる一方で、産業としては厳しい状況が続いており、後継者難ともあいまって、技術力やブランド力の維持・向上が課題とされる。

E主な事業者、職人

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F新たな取り組み、産業の広がり(近年の活動内容等)

ユネスコ無形文化遺産の登録を受け、伝統の技を残しつつ、現代的なデザインや用途をとりいれた新しい商品開発の取組みが行われている。小千谷市内の織物工房「匠之座」では、和装商品のほかに、インテリア、テーブルウェアをはじめ、 高温多湿な季節に最適な小千谷縮を使用したジャケットやブラウスなど、クールビズに照準を合わせたファッションブランド 「フリーフロム」など、オリジナル商品が取り扱われている。