コラム / 注目!地域ブランド | 2014年10月12日 日曜日

女性の視点で素材から工芸品、化粧品に~箔一(石川県金沢市)

伝統工芸「金沢箔」のメーカーである箔一は、あぶらとり紙を商品化して大成功した企業である。金沢箔を使った器など伝統工芸品をつくる一方、この金沢箔を生かした様々な商品をつくっているが、特に金箔を使った化粧品も大ヒット商品になっている。

あぶらとり紙は、顔の皮脂や汗などをとるために用いる化粧雑貨。ファンデーションや、白粉などで化粧した状態でも、肌の上から押し当てるだけで皮脂や汗を吸いとることができる。金沢や京都の土産物として、また化粧用品として広く使用されるようになっている人気商品だ。

金箔を打って伸ばすときに使う「箔打紙」をあぶらとり紙として、京都の舞妓などが化粧直しように珍重して使っていた。

金沢箔工芸品を製造する「箔一」の創業者である浅野邦子さん(同社会長)は、当時、箔打紙は希少であり、なかなか手に入らないものだったので、広く一般の方にも使ってもらいたいという思いから、箔打紙の製法であぶらとり紙を製造。「金箔打紙製法」と称して特許を取得し、さらに、手技と同じ動きでの大量生産ができる機会を考案。一般向けに商品化して大ヒットにつなげた。

現在、箔一から発売しているあぶらとり紙には多くのバリエーションがある。特にコラーゲンやアロエ、クレイなど、あぶらとり紙そのものの使い心地を楽しめ、やわらかで綺麗な色合いも楽しめるのが特徴だ。

■反発に負けず、新しい視点で切り開く

浅野さんは京都出身で、結婚を機に金沢市に移り住み、この地の伝統産業である金箔「金沢箔」の輝きに魅せられたという。

金箔は金閣寺や日光東照宮などの歴史的価値が高い寺社仏閣をはじめ、漆器、陶器、仏壇などさまざまな工芸品に使われている。加賀藩主・前田利家公の時代から受け継がれてきた金沢が誇る伝統工芸で、国内産の金箔の95%以上が金沢で生産されている。

ところが、金箔は工芸品に使われる材料でしかなく、金沢の金箔そのものが「工芸品」として扱われてはいなかった。「金沢箔を材料としてではなく、工芸品として確立させたい」との浅野さんの思いはどんどん強くなった。

またちょうどオイルショック後の不況の影響もあり、箔業界は大きな打撃を受けていた。箔業界のためにも、自ら新しい商品をつくり出さなくてはならないと決心し、箔屋で一番に金沢箔工芸品を作るという意味の「箔一」を創業し、自ら見よう

見まねで工芸品をつくり「金沢箔工芸品」として発売した。
当時、金箔を使っていたのは高級品のみ。ところが、浅野さんは「高級品ではなく、日常品として使ってほしい。金沢発のブランドとして全国に広めたい」との思いと、金箔が持つ様々な魅力を表現したいとの思いが強かった。金沢箔と一言で言っても、金属の種類や配合の割合によって多種多様に存在する。特殊な変色方法などにより、表現力は無限に広がるのだ。

当時の業界は保守的で、素材産業である金箔のメーカーが最終商品を製造することへの反発が強かった。しかし、新しい試みをしていかなければ、たとえ伝統があり、優れた技術があっても廃れてしまいかねない。強い逆風の中で創業をし、そして生まれたヒット商品が前出のあぶらとり紙だった。消費者から強い支持が得られたことで、浅野さんは自らの道と確信した。

箔一の商品は、金箔を単に素材の上に張るだけではなく、デザインの一部として生かしたり、メッキでは表現できないような金箔独特の質感や、色合いなどを出したりして、新規性に飛んだ商品に仕上げられている。しかも、自らの経験や感性を活かし、女性の身の回りの商品を次々と生み出していった。こうした商品が多くの女性に支持され、「金沢箔」の全国的な認知度も高まり、地場産業として地位が確立するに至った。

 

■金箔を使った化粧品と、食べる金箔の開発

あぶらとり紙が化粧分野に道を開いた。そこで、次に取り組んだのが化粧品だ。金箔と白金ナノコロイドが肌の新陳代謝を活発にするといわれているところに着目し、金箔を使った化粧品を開発した。例えば「金華cosmetic」は、金の輝きが女性の気持ちに華やぎを与えるとともに、女性の肌を健やかに保つ成分にこだわり、自然派化粧品として商品化されている。こうした金箔を用いた化粧品は、国内のみならず、アジア地域を中心とした世界に向けてシェアを拡大している。

このほかにも、「食べる金箔」の商品化にも取り組んだ。食品専用のオリジナル金箔の開発やISO認証の取得はその一環だ。さらに、箔そのものに特殊な技法を施した新しい金沢箔の開発、住空間から商業空間までを魅力的にする建材加工事業など、常識にとらわれない変革・革新によって、金沢箔の可能性をどんどん広げている。

「伝統産業は、伝統を継承しながらも常に進化するもの。ともすれともすれば埋もれがちな伝統の魅力を引き出し、現代の技術を応用させることで、新たな価値を創造すると信じています」と、浅野さんは語る。

新たな商品開発をする場合、市場にある商品の一部を置き換えるような商品では、既存の商品と市場を食うばかりで、市場も需要も拡大しない。だから、新しい需要を発掘していくためには、従来の技術や素材を使うと同時に、新たな技法やデザインを取り入れなくてはならない。箔一が成功したのは、まさにこのような視点で取り組まれたからだろう。

(文章:ブランド総合研究所 田中章雄)

参考: 泊一

※この記事は「月刊商工会」の連載記事「注目!地域ブランド」の記事として、2012年2月号に掲載されたものです

 



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