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■地域ブランド最前線

第6回 地域の魅力を地域外に伝えるには

やきそばという極めて庶民的なものを
「情報」という魔法によってブランドに

 地域ブランドの成功事例と言えば、「富士宮やきそば」がそのひとつに挙げられる。「やきそばでまちおこし」を標榜した取り組みである。たかがやきそばと思われるかもしれないが、これまでの6年間で、なんと217億円の経済効果を地元富士宮にもたらしているのだ。
 富士宮のやきそばは他の地域での焼きそばとは違っている。麺は硬い蒸し麺を使い、肉の代わりに肉カスを使い、鰹節ではなくいわしと青海苔の粉を振り掛ける。このやきそばを富士宮では、各家庭で頻繁に食べ、いろいろな飲食店のメニューにも並んでいる。ある日、富士宮青年会議所の渡辺英彦氏は、空洞化する富士宮の市街地を活性化するために開催された「中心市街地活性化のための市民によるワークショップ」のメンバーとして、「歩いて楽しいまち、路地裏の活性化」をテーマとして、市民と一緒に活動を始めた。その中で、路地裏にはお好み焼き屋など、焼きそばを提供する店が多いことに気がついた。しかも、その作り方がほかの地域とは少し違っている。そこでその実態を調査するために「富士宮やきそば学会」を組織化。その20人ほどのメンバーを「やきそばG麺」と名づけて、やきそばの実態調査に取り組んだのだ。
 もしも、この名前が「やきそば振興組合」だったなら、今の成功はなかったかもしれない。「やきそば」という庶民的な食べ物と、「学会」というアカデミックな組織名とがあまりにミスマッチであるため、マスコミも飛びついた。地元のテレビや新聞に取り上げられたため、G麺のメンバーは150軒ほどの店を回り、詳細な店データを蓄積し、そのデータベースを素に「富士宮やきそばマップ」を作成した。

■B級だじゃれで全国区へ

 静岡県内外で行われるイベントに出張してやきそばを焼くことを「ミッション麺ポッシブル」と呼んで積極的に展開。富士宮青年会議所30周年記念事業では「やきそばでギネスに挑戦」を行うなど、精力的かつ「おやじギャグ全開」で取り組んだのだ。
 さらに、富士宮市制60周年には、やきそばで著名な秋田県横手市、群馬県太田市を招いて「三者麺談」を開催。これには3つの市の市長が集まり、後ろに巨大なヘラを従えて「一緒にやきそばをもりあげよう」という趣旨の協定書に調印を押した。そして、3つの市のやきそばのカップめんを発売。この様子はもちろんテレビをはじめ多くのマスコミに取り上げられ、富士宮やきそばの取り組みは一気に全国区へ広がっていく。
 さらに、やきうどんでの町おこしをしていた北九州の小倉との対決「天下分け麺の戦い」を実施。2つの市が対決するとなれば、もちろんメディアは黙ってはいない。お互いの市のメンバーも本気になる。
 そして極めつけは、B級グルメでまちおこしをしていた日本各地と協力して実施した「B−1グランプリ」。第1回は青森県八戸で開催し大フィーバーに。そこで優勝した富士宮は第2回目の開催地となったが、なんと2日間での動員数は23万人にも及んだ。 開始前の主催者の目標10万人をはるかに上回ったのだ。
 こうしたイベントの効果は日ごろの集客にも大きく貢献し、今では“はとバス”が東京から富士宮やきそばを食べるための観光ツアー「ヤキソバスツアー」を運行するなど、富士宮やきそばを市外から食べに来る観光客が年間70万人を超えている。
 富士宮やきそば学会の渡辺会長は、「富士宮は言わずと知れた富士山の登山口であり、多くの観光資源がありながら、これまで“はとバス”は見向きもしませんでした。しかし、やきそばでなら来るんです。メディアに取り上げられて話題性が高いもののほうが商品化されやすいということだ。富士宮の観光も、こういった思考の転換=パラダイム・シフトが必要だったわけで、これはやきそばによる『観光改革』です」と意気込んでいる。
 こうした富士宮やきそばによる効果を調べたところ、平成13年〜18年間の6年間に、やきそば店のほか、麺の製造、土産品、キャベツやソースなどの具材、メディア露出、観光などの合計で217億円もの経済波及効果があったとの計算になった。

■いかに魅力を伝えるか

 今、日本各地で地域ブランドへの取り組みが活発に行われている。しかし、多くの地域では「商品は魅力的なのに、その魅力が伝わらない」と悩んでいる。素晴らしい商品を作っても、それが消費者に伝わらなければ、たんなる自己満足でしかないのだ。「いかにして魅力を伝えるか」ということは、魅力をつくるのと同じくらい重要である。
 富士宮やきそばの成功の要因は、「やきそば学会」から始まった“だじゃれ”と、市民の手作りによる取り組みによるもの。彼らの取り組みは、やきそばというそれまでにあった極めて市民的なものを、「情報」という魔法によって「金のなる木」に変えてしまったことなのだ。
 ただ、富士宮の取り組みは、たんに面白おかしいことをすることだけではない。そこには綿密な計画も込められているのだ。例えば「やきそばG麺」は市民が自らヤキソバを調査する組織。彼らが作ったマップは消費者視点であり、決して店舗視点ではない。
 そして「天下分け麺の戦い」や「三者麺談」は、「対決」「面談」という手法をとることによって、富士宮という地域内での取り組みを、全国レベルでの話題へと拡大することを可能にした。得てして地域ブランドへの取り組みは、その地域内だけで収束してしまっているケースが少なくない。しかしそれでは地元のメディアや地元住民にしか取り組みが伝わらない。地域外からヒト・モノ・カネを取り込んでこそ、地域ブランドにすることができる。
 「良いものを作っても伝わらない」というのは、自分ひとりでブランドをつくろうと考えているからだ。ほかの会社の人や、ほかの地域の人、そして消費者など多くの人を巻き込み、その取り組みが広く大きくなればなるほど、その魅力は大きくなる。それを忘れないでもらいたい。

                  ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄

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