■地域ブランド・マニュアル
第8回:地域ブランド・チェックシート
地域ブランド戦略チェックシートとは、地域ブランド戦略への取組状況を管理者や担当者が自己採点し、戦略上の問題点(課題)やその後のプランを導くもの。経営手法として評価の高いバランススコアカードなどの手法を元に、地域ブランド用に開発した。チェックシートは本来は約150の項目から構成されているが、その中から基本的な項目を中心に30項目を抜粋した「簡易版」を特別に作成した。
8-A. 地域ブランド・チェックシートの概要
各地域のブランド戦略への取り組みに関する30の設問に答えていくだけで、その地域のブランド戦略の進行状況とバランスが測定できる。点数が高い項目は取り組みが進んでいるが、逆に点数が低い項目は遅れていることを意味する。なお、点数が低い項目をいつまでにどのようにして評価を高めるようにするかの目標を設定し、それをまとめれば地域ブランド戦略の「アクションプラン」になる。
ここでは自己評価の結果分析の仕方を紹介したが、アドバイザーやコンサルタントなど第三者による評価とアドバイスを組み合わせれば、さらに精度が高められる。
チェックシートは3種類の形式でご提供しています。 お使いになりやすいものをご利用ください。
PDF形式 | ||
PDFファイルの表示にはAdobe ReaderなどPDFファイルの表示ができるソフトが必要です。右上のアイコンをクリックして アドビシステムズのサイトからAdobe Readerをインストールしてください。 | ||
GIF形式画像 上記リンクをクリックすると、ブラウザーが画像を表示します。印刷してご利用ください。 |
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Excelファイル Excelファイル形式の自動採点プログラムです。ダウンロードしてご利用ください。上のリンクをクリックすると、ご利用方法のページに移動します。 |
8-B. チェックシートの記入方法
@ あなたの地域における「地域ブランド」への取り組み状況について、チェックシートにあるA〜Fの計30の項目ごとに◎、〇、△、×の4段階でチェックし、その結果を表の「自己評価」の欄に記入してください。
◎=十分に該当する場合、あるいは実施済みまたは現在実施中 〇=ほぼ該当する場合、あるいは具体的な実施計画がある △=一部分は該当する場合、あるいは具体的にはなっていないが、実施を検討中 ×=ほとんどまたは全く該当しない、あるいは実施が検討されていない 無印=判定不能、または意味がわからない |
A 次に、あなたの地域および記入者であるあなた自身の地域ブランドに対する取り組みの程度を「G.マインド」の行にある「自己評価」の欄に、以下にしたがって5〜0の数字で記入してください。
5=かなり真剣に取り組んでいる 4=本気で(真剣に)取り組んでいる 3=ある程度は本気で取り組んでいる 2=あまり取り組んでいない 1=ほとんど取り組んでいない 0=取り組むつもりはない |
B 次に、自己評価したA〜Fの結果を以下のルールにしたがって数字に置き換え、「採点」の欄に数字で記入してください。
◎=3点 ○=2点 △=1点 (×と無印は0点) |
C A〜Gごとに、点数の合計を「合計」の欄に記入します。欄の右下に「 /15」とあるのは満点が15点であるという意味です。
D A〜Gまでの合計を「合計点」の欄に記入します。この満点は100点です。
E 算出した合計点を元に、表からブランド戦略の進行状況を確認し、あなたの地域のブランド戦略がどの程度の取り組みレベルかを判断します。
F 下の六角形のチャートに、A〜Gの各合計点をプロットし、それを直線で結びます。作成した六角形があなたの地域の戦略の状況になります。頂点が低い(中心に近い)ところほど取り組みが弱いことを意味しています。 下にある6つの例を元に、あなたの地域の戦略のタイプを見つけてください。そこに書いてある内容が、今後取り組むべき地域ブランド戦略の方向性になります。
8-C. チェックシートの判定方法
チェックシートのA〜Gの合計点を下の表に照らし合わし、貴地域のブランド戦略の進行状況をチェックしてください(満点は100点)。
90点〜100点 | 地域ブランド戦略への取り組みはかなり本格的に取り組まれており、取り組み内容のバランスもいいようです。この取り組みを今後も継続していくことと、他の分野への拡大を進めれば、さらに大きな成果に結びつくことが期待できます。 |
70点〜89点 | 地域ブランド戦略への取り組みはかなり進み、ある程度の成果が表れ始めてきているようです。ただし、その成果が本当の「地域ブランド」につながるには「継続」と「新たな試み」が重要です。地域ブランドにとらわれず、海外や企業などのブランド戦略の先進事例を参考にして、ブランド価値を高めるための次の戦略を策定してください。 |
50点〜69点 | 貴地域ではいろいろな戦略に取り組み始めたものの、なかなか具体的な成果には結びつかず、焦り始めてはいませんか。ブランド戦略を実施するに際して発生する障害の原因の多くは、取り組みのバランスの悪さか、「古い壁」です。これを解決するには、住民や地域外の消費者からの評価を分析し、その結果から戦略を立てること。作り手の視点ではなく、消費者の視点で取り組むことがブランド戦略の基本であることを再認識することが重要です。 |
30点〜49点 | 貴地域ではブランド戦略に取り組み始めたばかり、あるいはブランド戦略の定義を狭く考え過ぎていたため、まだまだ実践には移せていないようです。まずは貴地域にどのような魅力があるのかを洗い出すことです。ただしブランド戦略は机上で行えるものではありません。実際に地域を足で回り、多くの人からアイデアや意見が出るような組織・体制作りをすることが必要です。 |
0点〜29点 | 貴地域では地域ブランドには興味があっても、その取り組みは「戦略」と呼ばれるレベルではありません。しかも「地域ブランド」の定義が間違っていた可能性もあります。専任スタッフを任命するなど、本気で取り組むための組織作りが急務です。 |
8-D. チャート図による判定方法
作成したチャートの形と、下の中から最も似ているタイプを参考にしてください。
組織優先型(六角形の重心が上にあるタイプ) ブランド戦略に取り組む組織作りは進んでいても、ブランド・プレミアムやコミュニケーションなど実践部分での取り組みが遅れているようです。ブランド戦略に取り組み始めたばかりの地域に多いタイプです。 会議ばかりに時間をかけるのではなく、できるところから実践に移していくことが必要です。 |
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実践優先型(六角形の重心が下にあるタイプ) 商品開発や宣伝など地域名を付けた商品に関する取り組みが先行し、組織や計画などのマネジメントが遅れています。地域としての取り組みやメリットをよく考えなければ、商品の売上高は増えても、地域の活性化につながらない可能性があります。特に商品イメージが優先しないように注意が必要です。 ブランド戦略を外部業者に依存度している度合いが高い地域に多いタイプです。 |
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商品優先型(六角形の重心が右にあるタイプ) 地方産品や農産品など地元産の商品を中心とした地域ブランドに多いタイプ。地域ブランドというより、産地名を冠した商品による「産直ブランド」に近い場合が多く、販売が好調であっても、それがなかなか地域の活性化にはつながりません。また、商品が消費者不在となり評判が低下している可能性もあるので要注意です。 |
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歴史重視型(六角形の重心が左上にあるタイプ) 地域自体にすでに強いブランドイメージがあるタイプです。強い知名度を活用して、商品化をいかに勧めるかに悩んでいる場合が多いようです。商品化されたものは、品質を重視し、消費者の声を大切にするため評判はよい。しかし、様々なしがらみがあり、商品化に時間がかかることや、思い切った発想の転換が進まないということも少なくないようです。新たな商品開発が進まないと、ブランドが古臭くなってしまい顧客離れにつながるので注意。 |
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バランス型(六角形の重心がほぼ中央にあるタイプ) ブランド戦略を計画的に行っている地域に多いタイプです。6つの戦略がバランスが良く実践されており、理想的ともいえます。 もしもこのタイプでありながら、ブランド戦略の効果が表れていないと悩む方も少なくありません。ただ、ブランド戦略は数年から十年ぐらいの長期的な視点で取り組むべきものであり、1年や2年ではなかなか成果は現れません。辛抱強く戦略を実施し続ければ、かならず効果は表れるはずです。 |
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戦略初期型(六角形の重心がほぼ中央にあるタイプ) ブランド戦略を考えてはいても、なかなか実施に至っていないというタイプです。しかし、ブランド戦略は勝手に進むものではありません。まずは戦略の担当者を決め、はじめられるところから少しずつでも実践に移すことが重要です。 |
ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄