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■地域ブランド最前線

第8回 地域ブランドの守り方

種子島の幻のいも「安納いも」の挑戦
島の雇用を創出して産地と消費者を守る

 鉄砲伝来とロケットで著名な鹿児島県の種子島。いまここで新たな地域ブランドへの取り組みが始まっています。
 その取り組みの中心は「幻の芋」といわれている「安納いも」。実は、さつまいもの原種ともいえる安納いもは、焼き芋にすると糖度が40度を超えるものもあるというほど、とにかく甘くてクリーミーでおいしい芋です。まだ認知度が十分にあるわけではありませんが、この芋を全国ブランドにしようと、いま島をあげて取り組んでいます。

◆種子島は芋発祥の地

 種子島の西之表市の市街地から南に向かって車で10分弱。石寺海岸に「日本甘藷栽培初地之碑」が建てられています。ここに住んでいた大瀬休左衛門が、日本ではじめて甘藷(かんしょ)の栽培に成功したのです。これが薩摩藩に広まり、芋神様とも呼ばれている青木昆陽が徳川吉宗の命を受け甘藷栽培に成功し、全国に広めて普及させたというわけです。
 甘藷を飢饉対策として大きく育てやすく改良されたのがさつまいもです。一方で甘藷は、さつまいもと比べるとサイズは小さく、甘みが非常に強くて、焼き芋にするとねっとりとした食感のある独特の芋です。その甘藷の原種ともいえる芋が種子島の「安納」と呼ばれる地区に残っていました。それが安納いもです。
 安納いもの特徴は前出した糖度。生芋の状態でも糖度が16〜17度にも達します。収穫してから1ヶ月ほど寝かせると、さらに糖度が高くなります。長さが20センチくらいまでのサイズが最も味が良いとされています。品種的には皮が赤い安納紅と、皮が白い安納こがねの2種類。いずれも中は黄色いクリーム色です。

◆偽者の「安納いも」も登場

 ところが、このおいしい安納いもが地域ブランドとして、全国的にその魅力を伝えるのにはいくつかの課題がありました。1つは安納いもの呼び名がいくつかあったことです。品種名としては前述した「安納紅」と「安納こがね」という2つがありますが、これ以外にも「安納もみじ」があります。また、紫芋の名称が「種子島ゴールド」と黄色い色をイメージする名前になっています。そのため「安納いもってどの芋?」と消費者が疑問に思うようになっているのです。
 2つめの課題は、種子島以外の地で栽培された安納いもが出回りはじめているということです。種子島の安納地区を中心に自家用として栽培されてきた芋の中から、鹿児島県農業試験場において、色・味・形の優れたものを開発し平成10年に品種登録されたのが現在の安納いもです。安納いもの生長点を取り出して、培養した無菌苗(バイオ苗)を使って栽培しているのでサツマイモ病原ウィルスに強いという特徴があり、安心して栽培、食用にできるというわけです。
 この安納紅や安納こがねは育種登録上、鹿児島県の所有となっており、種子島だけに限定許諾された品種で、他の地域で栽培されたものは「安納いも」ではありません。もちろん、種子島の暖かい気候と水はけの良い土壌は安納いもの栽培に最適で、種子島で栽培された安納いもは甘みが強くなるのです。
 しかし、安納いもの評判が高まるにつれて、その苗を島外に持ち出して栽培し、販売する人が出てきてしまいました。「××県産安納いも」と堂々と書かれて店頭に並んでいることもあります。これでは種子島で育ち、さまざまな努力をしてブランド化を目指している努力が報われなくなります。もちろん、他産地のものが種子島の本当の安納いもより味が落ちるとすれば、安納いものイメージを悪くする原因になります。
 そのため、種子島では「安納いも」を地域団体商標として登録し、他の産地で作られたいもに「安納いも」という名前をつけさせないように取り組んでいます。それが産地と消費者を守ることになるからです。

◆安納いもの生産は数年間で3倍増

 3つめの課題は、新たに安納いもを栽培する人が増えたことにより、品質のばらつきが出てきてしまったことです。安納いもを栽培する農家が増えることは大歓迎です。実際に種子島ではいもの栽培を推奨しており、出荷面積および出荷量は数年間で3倍にも増えています。
 ところが、栽培を始めたばかりの人が作った安納いもは、どうしても甘みが弱い、あるいは形が悪いなど品質が低くなりがちです。種子島で収穫された安納いもをサンプリングしてその糖度を調べてみたところ、最も高いものは16度を超えていましたが、最も低いものは8度しかありませんでした。つまり同じ安納いもでありながら、その甘さでは2倍もの開きがあるということです。
 そこで、いま種子島では品質を高くするための栽培方法を指導する一方で、ある一定の基準に満たないいもには「安納いも」と呼ばせないというルール作りを行っています。また、安納いもは収穫後、一定期間寝かせることによってその糖度が高くなります。つまり、この寝かせて熟成させる工程を経ないで出荷したり、加工したりすると、安納いものよさが生かされません。こうした保管等の管理も重要なのです。

◆幻のいも「安納いも」を全国へ

 安納いものおいしさを引き出せるのは焼き芋です。遠赤外線でじっくりと焼き上げた焼き芋は、糖度が40度にもなり、そして中がトロトロのクリーム状になります。いままでの焼き芋の概念を打ち破る究極の焼き芋なのです。
 その焼き芋を家庭で手軽に食べられるようにと、種子島では焼き芋を休息冷凍した「冷凍焼きいも」を商品化しています。電子レンジで暖めるだけで焼きたての焼き芋ができるだけではなく、半解凍状態でシャーベットのようにして食べるのもおいしいとのことです。
 生芋を焼き芋にすることにより、商品の価値(単価)は2倍近く高まります。また、手軽においしく食べられるということで、需要も高まります。そして焼き芋工場が島の雇用創出にもつながります。ブランド戦略とはこのように需要を高め、付加価値を高めて、地域の活性化につなげる戦略のことですが、安納いもの冷凍焼き芋は、まさにそれを目指した効果的な商品といえるでしょう。
 そして、この冷凍の安納いもの焼きいもに違う魅力を見い出した人が居ます。それは福井県の鯖江にあるサバエ・シティーホテルの藤井正和シェフです。彼はインターネットで「マンゴーの王様プリン」という大ヒット商品を登場させた人気シェフです。彼はこのねっとりとした食感と、究極とも言える糖度に注目し、他の食材を限りなく少なくした「安納いもプリン」の開発に取り組んでいます。
 加熱するだけでペーストやクリーム状になる安納いもの特性を活かし、安納いもにしか作れない商品を作り出そうと考えたのです。まもなく新製品が誕生し、鯖江と種子島とインターネットの限定で発売を開始しますが、この商品には別の狙いもあります。つまり、商品開発が成功し、その製造方法が確立したところで、種子島に製造ラインを移すという考えです。そうすれば種子島は単なる食材の提供にとどまらず、島内の食品産業を活性化し、雇用創出につながり、島の活性化につながります。「島の素晴らしい食材は、島のためにあるのです」。藤井シェフの思いはここにあります。
 全国で地域資源を活用したさまざまな商品作りが始まっています。しかし、その中には、大手企業が地域の名前や食材を利用するだけの取り組みも少なくはありません。本当にその地域の魅力を最大限に引き出し、そしてその地域の活性化につながるのか。もう一度その取り組みを見直してみる必要がありそうです。

                  ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄

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