このページでは、Javascriptを使用しています

■ 地域ブランド構築法 ■
「コラム」トップへ戻る

 

第6回:地域ブランド化
2004年11月24日に「日本ブランド・ワーキンググループ」が開催されました。これは政府の知的財産戦略本部が日本のファッション・食・地域ブランドなどを「日本ブランド」として確立することを推進するためのものです。

推進計画の2004年版には取り組むべき課題として約400の項目が盛り込まれていますが、その中で「地域産業の活性化と地域ブランドの保護を目的とする商標制度の見直し」というものがあり、「地域ブランド」への取り組みが大きな柱の一つになっています。

今回は、「地域ブランド化」についてお話ししていこうと思います。

第1回日本ブランド・ワーキンググループ経済産業省の資料より抜粋

 
第1回日本ブランド・ワーキンググループ経済産業省の資料より抜粋

 
第1回日本ブランド・ワーキンググループ経済産業省の資料より抜粋

 

【第1回日本ブランド・ワーキンググループ
経済産業省の資料より抜粋】

 
さて、第1回の会合において発表された内容の中に、経済産業省では「地域ブランド化」ついて「地域ブランド化とは、(1)地域発の商品・サービスのブランド化と、(2)地域イメージのブランド化を結びつけ、好循環を生み出し、地域外の資金・人材を呼び込むという持続的な地域経済の活性化を図ること」と定義しています。

この定義は非常に明確です。つまり、右の図のようにその地域から生まれた商品やサービスを「地域ブランド商品」として確立するのと同時に、その地域が持つイメージを高めて「地域ブランド」そのものを高めていく。この2つを同時に行っていくことが「地域ブランド化」であるということです。

その具体例としては、「十勝ブランド」を取り上げています。十勝では、大自然の中で育った「安全・安心・おいしい」という素材を生かした商品として「十勝ワイン」と「十勝ナチュラルチーズ」という大ヒット商品が生まれています。ここでは、独自の味を追求し、生産技術を高めて高い品質を保つため、十勝ブランド認証制度を設定しています。

「地域ブランド化」には、すでに出来上がっている地域のイメージを利用して商品を作ったり、その地域とは関係のない商品に地名を付けて売るだけではなく、その商品自体が「地域ブランド」のイメージを高めていくことの一端を担っていることが必要です。

(1)地域ブランド = 過去の産物?

また、農林水産省からは、地域ブランド作り(ブランド生成)について「地域ブランドを生み出すためには、従来ある製品と差別化が図られるよう、地域の特性を生かしながら、消費者ニーズに応じた特色ある新品種の育成や技術開発を通じた新たな製品開発が重要」との指摘がありました。

つまり、ブランドの生成を支えるには、他との差別化を行い、またそのブランドの特性をより明確にするために新しい品種の改良と育成が必要であるということです。例えば、アントシアニンを高含有する紫イモ「アヤムラサキ」や、温州みかんとトロビタオレンジを掛け合わせた「清美オレンジ」などが典型例です。そして、こういった特長を生かした商品について、さらなる開発が進むことで「地域ブランド」になったといえます。

夕張メロンは苗木や接木を地域のJAが管理し、出荷に当たってはラベルや箱を統一するなど徹底した品質管理を行っています。こうした生産方式・規格の統一によるブランド価値の維持は、とても重要です。

このようにして、地域の特性と高い品質とがうまく融合された場合、消費者からの評価は高まり、そのブランドが「地域ブランド」として定着することが可能になります。

ここで重要なのは、地域ブランドとは決して過去の産物ではないということです。地形や気候、歴史、そして過去から受け継がれてきた技術などを生かしながら、新たに生まれている商品や技術であるということを忘れてはいけません。十勝ワインにしても、清美オレンジや夕張メロンにしても、いずれもその土地で新たに生み出された新しい製品です。

ブランドという言葉で連想するのは、ルイ・ヴィトンやメルセデス・ベンツなどの、欧州の歴史のある有名ブランドという方が多いようです。しかし、これらのブランドも新しい商品開発に余念がなく、常に世の中や市場に対してインパクトのある商品作りをしていこうという試みがなされています。

ただし、これまでの商品が培ってきた商品製造技術の高さや、素材の品質などについては決して妥協はせず、従来までの評価を下げない、あるいはさらに高めるような、あくなき努力もまたなされています。

(2)"新しさ"を開発する力

これは、日本におけるブランドでも同様です。

日本のブランドの代表と言えばソニーとトヨタが挙げられます。ソニーのブランドの名声は、「トリニトロン」や「ウオークマン」「プレイステーション」「アイボ」など、常に新しい商品を作り出すことで築き上げられてきました。ですから、消費者を「あっ」と驚かせるような新製品が出ないと、「ソニーらしさが失われた」とか「ソニーは元気がない」などと酷評されてしまいます。常に新しい商品を生み出していくという姿勢が、ソニーというブランドにつながっています。

トヨタには、クラウンやカローラなど、何十年も前からずっと売れ続けている車種ブランドがあります。しかし、これら人気車種も、毎年のようにモデルチェンジを繰り返し、機能や走りを高めて居住性を高めるという「改善」を、常に繰り返しています。その一方で、ハイブリッドカーやITSなど、世界をリードする新しい技術の開発にも余念がありません。こうした新しい創意・工夫が高いブランド価値を生み出しています。

古い事柄にこだわって、あるいは古いしがらみに固執して同じものを作り続けていては、ブランドは次第にその力を失います。消費者とは流れる水のような存在であり、消費者のニーズは常に揺れ動いています。ボートは流れに逆らってこぎ続けなくてはその場所にとどまることはできません。知らず知らずのうちに流され、消費者を見失っているようでは、問題があるといえるでしょう。

また、新しいブランドを作ろうという試みの際には、その商品に、なんらかのこれまでにない新しい事柄を加える必要があります。「ここが他のブランドとは違うよ」「こんな良さがあるんだよ」ということを知らせるには、消費者が興味を示すような「新鮮味」が必要です。水面をバシャバシャとたたいて波を立てなければ、まず消費者が気付くことはありません。

例えば、「百年以上前から受け継がれてきた伝統の味と技術で・・・」というキャッチフレーズをよく目にします。確かに、機械式の大量生産に飽きた消費者が、より高品質の商品を求めて伝統的な手作りの商品に対して興味を寄せてきていますし、それが地域ブランド化の最大のチャンスになっていると言えるでしょう。

しかし、単なる「昔から」と「手作り」では、機械で生産したものとの差別化はできても、その地域ならではのブランドとしての特徴にはなり得ません。

何が優れており、何が他にはない魅力であるのか、を明確に打ち出すことができるかどうか。そこが地域ブランド化に不可欠な点です。

【田中章雄 出典:「農業経営者」2005年1月号(農業技術通信社)】


 第7回:地域ブランド化  



Copyright (C) 2005-2008 Brand Research Institute, Inc.