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ブランドを育て、地域と企業をはぐくむ

地域ブランド調査2006[市版]  結果分析 第2回

合併により新しい名前になった市についての考察 

  2001年以降に市町村が合併した、いわゆる「平成の大合併」で誕生した新市の中で、旧自治体の名称を引き継がずに新しくなった市は全国で123ある(漢字から平仮名になったというように、表記が変わった市を含む。ブランド総合研究所調べ)。  そこで、地域ブランド調査[市版]の結果から、こうした新しい名称の市が、消費者からどのように評価をされているかを分析してみた。

 合併により新たに誕生した新市のうち、最も消費者から魅力的であると思われている市は宮古島市(沖縄県)となった。全国779市の魅力度ランキングでも21位と高い評価を得ている。
 同市は2005年10月に平良市と宮古郡伊良部町、上野村、城辺町、下地町の5市町村が対等合併して誕生した。同地域では2001年より合併に向けての協議が進められていたが、新市名として「宮古市」「琉宮市」などの中から新市名を問う住民アンケートなどにより「宮古島市」に決定したという経緯がある。
 2位は奄美市(鹿児島県)で2006年3月に名瀬市と住用村、笠利町が合併して誕生した。同市の場合は宮古島市と同様に島名を採用したケースだが、島名の「奄美大島」と、「奄美群島」の両方を連想できることが、高い魅力(全国で28位)につながっている。
 3位は安曇野市(長野県)。同市は2005年10月に南安曇郡豊科町、穂高町、三郷村、堀金村、東筑摩郡明科町が合併して誕生。「安曇野」は松本市や大町市、池田町などを含む広域名称。同地域の高いイメージを連想できるため、長野県では長野市や松本市を上回り、県下で最も高い評価となった(全国では39位)。  

 県庁所在地として唯一合併で市名が変更となったさいたま市(埼玉県)は、認知度と情報接触度で119市中で最も高くなった(全国では認知度が38位、情報接触度は21位)が、魅力度では14位(全国で139位)と両指標に比べるとやや低い結果となった。
 コシヒカリが評価の高い魚沼市(新潟県)は、認知度で2位(全国で108位)、情報接触度で3位(同77位)、魅力度で9位(同90位)となった。

 次に、新市をその名称の由来をもとに大別してみた。つまり、
(1)これまで使われてきた郡の名称など広域圏を指すもの
  (魚沼市、郡上市など37市)、
(2)山や川、島といった自然資源からとったもの
  (奄美市、白山市、四万十市など27市)
(3)歴史上使用されてきた旧国名などの名称
  (飛騨市、丹波市、越前市など21市)
(4)ひらがなやカタカナによる名称
  (つくばみらい市や南アルプス市など21市。その由来には言及しない)
(5)合併した旧自治体の名称を合成した造語
  (小美玉市、福津市など8市)
(6)市の地理的要因などをもとに新たに作られたもの
  (1〜5までのどれにも属さないもの含む9市。中央市、四国中央市など)
の6つだ。ただし新市の名称には上記の由来を複数兼ね備えているケースもあるが、最も主と思われるものだけに属するようにしてある。

 その結果、もっとも多かったのは広域圏を表すもので37市。また、山や川、島などの自然資源に由来するものが27市、旧国(藩)名などが21市となった。この3つの合計は85市で、新名称の市の3つに2つを占めている。これらは、従来からその地域をあらわす名称として用いられていたものであるため、いわゆる地域のブランドイメージは大きくは変わらない。そのため、住民からの支持も比較的得られやすかったと思われる。
 一方、新たな名称を採用した市のうち、半数を超える21市はひらがなやカタカナとなっている。その名称の由来は1〜3のいずれかであるケースが大半だが、表記上の特徴が強いため、ここでは別個に集計した。ちなみにカタカナで表記されているのは南アルプス市だけ、方角などの漢字とひらがなの組み合わせはいちき串木野市、ふじみ野市、南あわじ市、南さつま市、東かがわ市の計5市だった。
 また、合併した旧市名の組み合わせなどによるものが8市、そしてこれら以外の由来によるものは9市あった。
 これらの市名の由来による評価の違いをそれぞれに分類された市の各指標の平均で比較してみた(表参照)。すると、認知度、魅力度、情報接触殿いずれも6つの分類の中で最も評価が高くなったのは自然資源名の市(27市平均)となった。
 旧国名を採用した市(21市平均)は認知度および魅力度で自然資源名に次いで2番目に高かった。ひらがな名(カタカナ1市を含む21市平均)は情報接触度では自然資源名に次いで2番目に高かったが、魅力度は自然資源名や旧国名より評価が低く、「わかりやすいが魅力は伝わりにくい」という表音文字の特徴が現れている。
 なお、広域の地名(37市平均)、合成名(8市平均)、その他の名(9市平均)はいずれも認知度、魅力度、情報接触度ともにかなり低い結果になった。
 しかし、新市名となった123市の平均での認知度は12.0で、これは全国779市の平均23.0より大幅に下回っている。また魅力度は4.7で全国平均の7.6より、情報接触の7.1は同13.4よりいずれの大幅に下回っている。これは各市がまだ合併して日が浅く、名称やイメージが一般消費者に浸透していないことを物語っている。
 言い換えれば、現在の評価は、市の名前に由来した地域資源などを通して消費者が市に対して抱いている「期待」であるとも言うこともできる。これらの期待をいかに活用するか、あるいはいかにしてその期待をさらに高めていくかが、各市の地域ブランド戦略として重要だろう。

■魅力度ランキング    
全国順位 順位 市名 道府県 魅力度
全国平均 7.6
対象市平均 4.7
21 1 宮古島市 沖縄 34.3
28 2 奄美市 鹿児島 30.8
39 3 安曇野市 長野 26.6
47 4 伊豆市 静岡 25.3
53 5 飛騨市 岐阜 24.2
70 6 四万十市 高知 21.8
78 7 那須塩原市 栃木 20.2
84 8 由布市 大分 19.2
90 9 魚沼市 新潟 17.9
94 10 南アルプス市 山梨 17.6
107 11 雲仙市 長崎 16.2
124 12 佐渡市 新潟 14.7
131 13 さぬき市 香川 13.9
139 14 さいたま市 埼玉 13.2
146 15 つくばみらい市 茨城 12.8
158 16 壱岐市 長崎 11.8
161 17 南房総市 千葉 11.6
175 18 瀬戸内市 岡山 10.7
189 19 郡上市 岐阜 10.0
197 20 丹波市 兵庫 9.4


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