■ 地域ブランド調査2006[市版] 結果分析 第3回
中核市に関する考察
▲ 【図1】中核市分布図 |
(注1)当該市及び所属する都道府県議会の議決を経ることが必要
※10月24日の閣議決定により2007年4月1日より指定都市に移行
中核市の中で、最も魅力的であると評価を得たのは函館市(北海道)の57.6点だった。函館市は全国順位でも3位で、その他の指標においても居住意欲、観光意欲、産品(食品)購入意向の全国ランキングで10位以内に入っており、各指標において極めて高い評価を得ている。特に食品購入意欲度も全国で1位と他市に比べて高い数値を得ている。
■魅力度ランキング
順位
市名
道府県名
点
全国順位
県内順位
全国平均
7.6
中核市平均
20.1
1
函館市
北海道
57.6
3
2
2
長崎市
長崎
44.2
11
1
3
金沢市
石川
42.3
12
1
4
奈良市
奈良
37.3
17
1
5
旭川市
北海道
35.9
18
5
6
倉敷市
岡山
35.4
19
1
7
横須賀市
神奈川
28.1
34
4
8
姫路市
兵庫
26.5
40
2
9
青森市
青森
26.2
42
1
10
長野市
長野
25.6
46
3
11
熊本市
熊本
25.0
49
1
12
浜松市※
静岡
23.5
59
4
12
下関市
山口
23.5
59
2
14
高知市
高知
21.9
68
2
14
鹿児島市
鹿児島
21.9
68
1
16
宮崎市
宮崎
20.7
74
1
17
岡山市
岡山
20.6
75
2
18
高松市
香川
19.8
79
1
19
松山市
愛媛
19.4
82
1
20
秋田市
秋田
16.8
100
2
21
富山市
富山
16.5
104
1
22
宇都宮市
栃木
15.3
116
3
23
新潟市※
新潟
15.2
118
2
24
大分市
大分
14.5
125
3
25
和歌山市
和歌山
11.1
164
1
26
岐阜市
岐阜
10.8
171
4
27
川越市
埼玉
10.7
175
3
27
相模原市
神奈川
10.7
175
9
29
船橋市
千葉
9.4
197
8
30
東大阪市
大阪
8.3
217
4
31
いわき市
福島
7.9
230
4
32
郡山市
福島
7.8
236
5
32
豊田市
愛知
7.8
236
5
34
福山市
広島
7.0
255
4
35
岡崎市
愛知
5.9
287
9
36
豊橋市
愛知
5.7
292
11
37
高槻市
大阪
5.3
307
9
…三大都市圏内の中核市
2位は長崎市で44.2(全国順位は11位)となった。長崎市も居住、観光、産品(食品、非食品)購入それぞれの意欲度ランキングについて、全て全国20位以内となっており、バランスよく高い評価を得ている。
3位は金沢市で42.3(同12位)。金沢市は食品の購入意欲は51位とやや評価が下がるものの、その他の指標についてはいずれも20位以内に入っており、中でも非食品購入意向については9位となっている。
4位は奈良市で37.3(同17位)、5位は旭川市で35.9(同18位)と続いている。旭川市は観光意欲、食品購入意向の各ランキングにおいて10位以内となっている。
魅力度ランキングで上位となった市の特徴は、上位6市について、居住意欲度が全市で10点以上となっていることが挙げられる。居住意欲度について10点以上となった市は全国でも23市のみで、「住みたい」と消費者が評価した市が中核市においては魅力度の評価に繋がっているといえる。
また、来年度より政令指定都市に格上げされる浜松市と新潟市はそれぞれ2位(同59位)、23位(同118位)となった。今回の点数を政令指定都市(現行では15市)と比較すると、両市を含めた17市中で浜松市は11位、新潟市は15位という結果になる。
中核市全市の魅力度に関する傾向として顕著だったのは、三大都市圏と地方圏(注2)の市について分類した場合だ。中核市で三大都市圏に属する市は全部で13市あり、ランキング表では当該市は灰色で表記している。
(注2)ここで三大都市圏とは、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)、中京圏(岐阜県、愛知県、三重県)、近畿圏(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)とし、地方圏とはその他33道県を指すものとする。
それによると25位から37位までの間に13市中10市がランクインするという結果になった。一方、4位の奈良市(全国順位17位)や7位の横須賀市(同34位)、8位の姫路市(同40位)の3市については今回、全国順位としても上位にランクインしており、三大都市圏の各市において、消費者からの評価が二極化するという結果となった。
ところで、【図3】は三大都市圏と地方圏域の市について、総合指標の平均点を比較したものである。それによると、認知度については三大都市圏は地方圏よりも4.4点低く、魅力度(および認知者魅力度)については10点近くも差が開くというように、認知度よりも魅力度に関して差が出るという結果となっている。
【図2】上位5市の意向・意欲に関する指標の全国順位
魅力度
上位市
居住
観光
産品
食品
非食品
1
函館市
7
2
1
16
2
長崎市
20
10
13
13
3
金沢市
16
13
51
9
4
奈良市
23
21
61
28
5
旭川市
22
9
4
34
また、中核市と政令指定都市との結果を比較(【図4】参照)すると、市のイメージに関する設問項目の結果に差異が見られた。政令市は「都会的」「活気がある」というイメージが強くもたれているが、中核市は「情緒がある」「他にはない魅力がある」というイメージが持たれているという傾向があった。三大都市圏と地方圏の市を比較すると、三大都市圏域の市には政令市と同様に「都会的」「活気がある」というイメージが地方圏の市よりも高い傾向にあった。
【図3】三大都市圏とその他の圏域市の平均点比較
魅力度
認知者
魅力度
認知度
情報接触
度
全国平均
7.6
11.7
23.0
13.4
中核市
20.1
21.3
45.0
31.6
三大都市圏
13.7
14.8
42.1
27.4
地方圏
23.5
24.7
46.5
33.8
政令市
34.0
34.8
57.3
48.6
つまり、三大都市圏の中核市は地方圏の市に比べて、イメージにおいて政令市のそれと類似しているために市の「個性」が伝わりづらい状況にあり、それが魅力度に影響を与える一因となっていると言える。そんな中、魅力度において高い評価を得ている奈良市、姫路市はイメージにおいて中核市全体において特徴として挙げたイメージ「情緒がある」「他にはない魅力がある」に評価が集まり、消費者に市の「個性」が伝わっている。また、横須賀市については「都会的」「活気がある」というイメージが強く持たれているが、同時に「センスがいい」にも評価が集まっている。
【図4】各分類ごとの「市のイメージ」評価平均点
全国平均
中核市
政令市
全体
三大都市圏
地方圏
都会的である
2.1
5.9
8.3
4.6
34.1
親しみがある
3.8
9.8
6.7
11.5
12.9
憧れる
1.3
3.4
2.6
3.8
7.5
活気がある
2.3
6.3
7.5
5.7
22.6
センスがいい
1.1
2.5
2.5
2.5
10.1
安心できる
1.7
3.6
2.3
4.3
4.0
環境にやさしい
3.9
6.2
3.2
7.7
3.3
他にはない魅力がある
5.1
12.2
7.2
14.9
14.2
豊かさを感じる
2.7
6.0
4.0
7.1
9.9
情緒がある
6.9
16.3
9.9
19.8
12.2
結局、中核市がその地域のイメージを引っ張っていくリーダー的な存在の市となっていくためには、他の地域にはない魅力(その地域固有の魅力)を打ち出していくことが必要だ。ただし、中核市の場合にはその市の名称が、県や広域の名称と一致しているケースが少なくない。こういう場合には、消費者の評価は行政区間を超えて関連するものだから、単に市の取り組みだけで地域の評価が高まるわけではない。つまり中核市は単独でのブランド戦略を行なうより、その地域のリーダー的な存在として、地域内外の消費者からその市を含む広域の地域の評価を高めていくような戦略を打ち出すことが必要だろう。
本レポートに対するご質問、および地域ブランド調査2006[市版]
総合報告書のご購入については下記までご連絡ください。
ブランド総合研究所 担当:吉村、安田
URL: http://www.tiiki.jp/
電話: 03-3539-3011
FAX: 03-3539-3013
e-mail: survey@tiiki.jp