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ブランドを育て、地域と企業をはぐくむ

地域ブランド調査2006[市版]  結果分析 第7回

観光編〜上位市にみる来訪者を地域に呼び込む要因〜 

 【図1】4つの観光資源と地域の魅力度

  観光に来る来訪者たちは、地域に何を求めてやってくるのだろうか?近年、全国各地域で観光に関する関心度は高まりをみせており、社会環境の変化に伴い、観光、来訪者を呼び込むことが地域活性化の重要な施策となっている。地域資源には何があり、どう活用していけばよいのか。今回のレポートでは地域ブランド調査で行なった観光に関する調査結果から観光施策の見方を考える。

  今回の調査で観光に関する設問は「観光経験」と「観光意欲」、そして「観光資源に対する評価」から構成されている。

  「観光経験」については、「過去5年間に各市を観光目的で訪れたことがありますか?」という問い、そして「観光意欲」については「今後、各市に観光や旅行に行きたいと思いますか?」という問いに対して回答してもらい、その結果から得点を算出、ランキングを作成した。

  また、「観光資源に対する評価」については、「各市は、観光面でどんな魅力があると思いますか」という問いに対して「自然や緑が豊か」、「おもてなしがよい」など16の項目について該当するものを複数回答してもらった。

  観光施策を立案するに当たって、活用する地域資源を分類したのが【図1】で、「歴史資源」「自然資源」「モノ資源」「サービス資源」の4つの地域資源とした。そして、その4つの資源の間にある矢印はそれぞれの資源の性向を表している軸である。

  すなわち、縦軸において、上にある歴史、自然資源は古来より地域が有している資源。一方、下にある残りの資源は人が新たに創り出せる資源である。

  次に横軸については、左にある歴史・モノ資源は有形の資源、右にある自然・サービス資源は無形の地域資源である(とは言え、実際にはそのように地域資源を分類し切るといったことは困難であり、あくまで各資源にはそのような傾向があるということをご理解いただければ幸いである)。

  地域に来訪者を呼び込むには、これら4つの資源をどう活用するかが観光施策を立案する上で重要である。また、観光によって地域を活性化していくためにはヒト、モノ、カネを集め、循環させるような仕組みを構築していくことを施策に反映させることも忘れてはならないだろう。

  その為にはこの4つの資源のうち一つだけが突出しているだけでは活性化には不十分である。観光客が多くやってきてもカネが落ちずに、地域が疲弊するだけ…といったことは日本各地のいわゆる観光地と呼ばれる地域でまま見られるケースだが、それらの地域の場合、1つだけの地域資源に観光客の流入要因が拠っているといったことが考えられる。

テキスト ボックス:  

【表1】観光資源に対する評価項目の分類

  項目
自然資源 「自然や緑が豊か」「街並みがきれい」
「交通の便がよい・行きやすい」
歴史資源 「歴史がある」「風情がある」
「魅力的な歴史建造物がある」
モノ資源 「食事がおいしい」「魅力的な店や商店街がある」「魅力的なテーマパークや施設がある」
「魅力的な美術館や博物館がある」
「買いたい土産や地域産品がある」
サービス資源 「おもてなしがよい」「文化・芸術が盛ん」
「趣味やスポーツが楽しめる」
「魅力的な祭りやイベントがある」
「泊まりたい宿泊施設がある」

  そこで、今回行った調査設問「観光資源に対する評価」において、回答者に答えてもらった16の評価項目を4つの地域資源に分類したものが【表1】である。これらの評価項目の結果が、観光経験度、観光意欲度の上位の市において、どのように影響しているのかを分析してみた。

  【図2】は「観光資源に対する評価」にみられる3つの類型を表したものである。

 Aの≪複数の地域資源が評価されている市≫については、大都市で且つ観光経験度、意欲度共に20位以内に入った市に多くみられる型である。

  札幌市は、観光経験度は33.6点で7位で、観光意欲度においては経験度の点数よりも倍以上の68.8点で1位となっている。これは札幌市が多くの潜在顧客を有していると言え、魅力度ランキングにおいても1位となっている。観光資源評価項目の結果はというと、歴史資源の20位以外において全て3位以内に入るという高評価を得ている。これらの3つの資源が札幌市の高評価の要因であるといえよう。

 京都市は観光経験度で43.3点の3位に、観光意欲度で58.8点の6位となった。イメージ項目では4つ全ての型で10位以内で、中でも「歴史資源」「サービス資源」においては1位となっている。

  小樽市は上記2市と比較して都市の規模という点では格段に小さい市であるが、観光経験度では19位(22.3点)、観光意欲度では5位(60.3点)と大都市有利な中健闘した。観光資源評価項目においても自然、歴史、モノ資源において10位以内となっている。

  次にBの≪単一の地域資源が評価されている市≫では様々なタイプの市が該当するのが特徴だ。

  大阪市は観光経験度では46.2点で2位だが、観光意欲度では26位(41.8点)と順位を落としている。全国平均では観光経験度よりも観光意欲度の方が高い中、大阪市は逆に点数を下げている。

  逆に帯広市は観光経験度では12.6点で119位だが、観光意欲度では43.1点で20位となっている。観光資源評価項目では「自然資源」が9位となっており、このことが観光意欲度の高さと強い関係性を持っているものと考えられる。

 また、浦安市は観光経験度では34.3点の5位となっており、観光資源評価項目においては「モノ資源」が10位と最も高い評価を得ている。「モノ資源の中」でも特に「魅力的なテーマパークや施設がある」という設問項目において1位となっている。しかし、観光意欲度では51位となっており、一つの資源が市に対する観光意欲、ひいては魅力度に対して与える影響力の限界を示唆しているのではないだろうか。

 最後に3つ目の型はCの≪地域資源が評価されていない市≫についてである。

  川崎市は観光経験度において23.7点で17位となっているが、観光意欲度では16.4点で178位にまで順位を大きく落としている。観光資源評価項目では「自然資源」「モノ資源」においてそれぞれ64位、56位と比較的高い順位にあるのだが、それが観光意欲や市の魅力に繋がっていない。因みに「自然資源」の順位の高さについては「交通の便がよい・行きやすい」という地勢が大きく寄与している。これは千葉市にも同様の傾向があり、観光経験度の20位(22.6点)から観光意欲度では185位まで順位を落としている。

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