地域ブランドの商標(地域団体商標)が登録しやすくなる改正商標法の施行(今年4月)がいよいよ間近に迫ってきました。登録に向けて本格的に準備している地域も増えてきていますが、中には首を傾げたくなるケースも少なくありません。
「商標をとれば、知名度が上がる」と考えるのは浅はかです。各種のメディアに掲載された記事の中でも「商標登録することで、知名度アップを目指す」と書かれているもの
をよく見かけます。しかし、世の中には商標が登録されていにもかかわらず、無名の商品なんていくらでもあります。
申請された商標の一覧を毎日のぞく消費者なんているはずはありません。登録商標だからといって消費者の記憶に残りやすいわけでもありません。最初のころは「××が商標登録を申請」と
、地元の新聞などに記事として取り上げられるかもしれませんが、それは登録から間がないときの話で、そのような記事を真剣に読むのは行政や事業者などの関係者に限られます。
そもそも、地域ブランド商標として登録されるには、その商品が複数の都道府県で認知されていることが必要です。ということは、地元の新聞に記事が載っても、認知度にはあまり影響はないということですよね。本当に知ってもらいたいのは、例えば東京や大阪などの大消費地の主婦などじゃないのでしょうか?
つまり、商標を取る前に、その商標をとる目的(防御のためか、管理のためか、ロイヤルティ収入のためか、それとも意識向上のためか)を明確にする必要があるのではないでしょうか。
目的として最も多いのは、その地域以外で作られた“ニセモノ”を排他するための手段に活用しようというものです。ただし、これが商標登録の目的であれば、市場にニセモノが流通していないかをチェックするための仕組みや、ニセモノを発見したときの異議申し立て
、訴訟などをする組織作りとその費用の捻出方法なども検討しておく必要があります。
一方で、商品の品質やイメージなどがばらばらになってしまっている状況を改善するため、商標登録することで定義を明確にするという「管理」が目的というケースもあります。この場合は素材や製造方法、流通など
について、対象商品を明確に定義することが重要になります。あいまいな定義のままで商標をとっても、品質は守れません。品質が守れなければ、それは「ブランド」として高い評価が得られるはずもありません。
また、商標の申請や管理、運営にはコストがかかります。そのコストをどのように調達するかも重要です。その商標を使用した商品の売り上げや利益から徴収するという方法にするのであれば、ロイヤリティ(使用料)のルールや徴収方法、使用料の算出方法なども十分
に議論しておく必要があるでしょう。
商標を申請するという目標を立てることで、地域ブランドに対する意識が高まり、組合の団結が強くなるというメリットは大いに期待できます(実はこれが一番大きなメリットかもしれ
ません)。そのためには、なるべく多くの組合員が議論に加わり、行政、事業者が一丸となって取り組むことが必要ではないかと思います。