近畿経済産業局は2月10日に京都府民総合交流プラザ「京都テルサ」にて「地域ブランドネットワークフォーラム」を開催し、満員となる約130名を集めて、地域ブランドの戦略における課題や悩みなどを共有化し、今後の発展と活性化にむけて熱い議論が交わされた。
まず近畿地域における地域ブランドの取り組み事例として、京都食ブランド商品「京都吟味百撰」について京都府中小企業団体中央会アドバイザーの片岡靖氏、「泉州こだわりタオル」について大阪タオル工業組合常務理事の樫井学氏、「高島いろは」について高島地域地場産業振興センターの専務理事中谷一朗氏、丹後ブランド「Tangl Good Goods」について丹後地域地場産業振興センター主事の山口正彦氏の計4名による各地域での取り組み内容と課題などが紹介された。
京都吟味百撰は他産地の「京風」商品が本物の京都産商品を圧迫するという状況を改善するために、平成14年度より開始している認定事業。食の安全や他産地との差別化、業界間と行政などの連携などに注力して成果が高まってきているが、その一方で認定審査基準作成の難しさ、認定の認知度を高めるという課題があるという。
泉州こだわりタオルは、後さらしという製法により、健康面や吸水性などで優れている。こうした特長を生かして輸入品と棲み分けることと、関西空港で1万本のタオルを配るなど平成5年度より認知度の向上などに取り組んでいる。
高島いろはは、高島産のクレープ綿生地と手書き京友禅とのコラボレーションで誕生した和洋折衷の新ブランド。素材ちぢみという織物市場が縮小している中で、デザイナーによる商品開発、若手有志による商品開発などちぢみの特色を生かした製品ブランドづくりに平成14年度より取り組んでいるが、販路を開拓し、販売につなげることが最大の課題。
丹後ブランドは年間650万人という観光客が購入するような魅力ある地元の特産品を作ることを主目的とした認定事業で平成11年度から取り組まれている。地場産業者が意識改革をし、積極的に事業参加することや、認定商品ロゴマークの認知度向上などが課題となっている。
以上の4人の発表の後、全国からの事例発表として、新潟県燕市より燕商工会議所専務理事の笠原庄司氏が、ビジネス市場向けに燕市の磨くプロ集団による組織的な取り組み「磨き屋シンジケート」についての取り組みと、消費者向けの和テイストの新ブランドとして「enn」を欧州で展開してから逆輸入するという試みを紹介。
その後、これらの7人に地域ブランドのアドバイザーとして活躍している3名、流通科学大学教授の井上芳郎氏(豊岡鞄)、なにわ創信舎取締役の原テルキ氏(湖東)、中小企業診断士の湯浅伸一氏(串本)と、コーディネーター役としてブランド総合研究所社長の田中章雄の計11人によるラウンドテーブル方式によるディスカッションが行われた。
「なんのためにブランド戦略をやるのか、ブランド戦略の目的を明確にする必要がある」、「認知度を高めてもブランドにはならない」、「ブランドの魅力を簡潔に表せないといけない」、「認証制度は底上げにはなってもブランドにはつながりにくい」、「消費者視点(マーケットイン)で取り組みを見直す必要がある」など、実際のブランド戦略の現場における悩みや課題についての意見が積極的に交わされた。
関連情報:
近畿経済産業局 「近畿・地域ブランドネットワークフォーラム」
http://www.kansai.meti.go.jp/3-2chisin/brand/nwforamu.html