地域団体商標
 
 

 

 

Google ホームへ

tiiki.jpを検索
ネット検索
 

このサイトは、BRI ブランド総合研究所が運営しています<会社情報> お問い合わせは専用フォームでお寄せください

田中の地域ブランドニュース解析


■出願の前に地域団体商標について基礎を確認しておこう

 4月1日より施行された改正商標法では、「地域団体商標」の登録が認められるようになりました。この地域団体商標の基礎をおさらいしておきましょう。

 今回の商標法改正は、地域ブランドをより適切に保護することにより、信用力の維持による競争力の強化と地域経済の活性化を支援することを目的としています。

 それまでのの商標法では、地域名と商品名からなる商標は、一定の要件の下でしか商標登録を受けることを認めていませんでした。
登録を受けることができるのは、

 @図形等を組み合わせた場合
 (例:小田原かまぼこ、大館曲げわっぱ等)
 A全国的な知名度を獲得したことにより、特定の事業者の商品であることを識別できる場合
 (例:夕張メロン、西陣織等)

 に限られていました。 @の場合、図形と一体でないと使用できない。異なる図形を付した同一文字の使用を排除できない。 Aの場合、全国的な知名度を獲得しないと登録を受けられない。それまでの間に他者の便乗を排除できない、 という問題点があったのです。

 そこで、地域名と商品名からなる商標(地名入り商標)について、より早い段階で団体商標として登録を受けることを可能とすることを目的に、商標法の改正が行われたので す。

 具体的な改正内容は、下記の通りです。
・地名入り商標について、事業協同組合や農業協同組合によって使用されたこ とにより、例えば、複数都道府県に及ぶほどの周知性を獲得した場合には、 地域団体商標として登録を認める。

・一方、地名入り商標の出願前から同一の商標を使用している第三者は、 自己のためであれば当該商標を使用することができる。

・地域団体商標が登録された後に、周知性や地域との関連性が失われ た場合に無効審判の対象とするとともに、商品の品質の誤認を生じ させるような不適切な方法で登録商標を使用した場合に取消審判の 対象とする。

 出願した内容が、地域団体商標として登録されるためには、以下の要件が審査されます。

 ・団体の適格性
 ・地名と商品(役務)の密接な関連性
  (商品の産地、役務の提供地、主要原材料の産地等)
 ・使用による一定程度の周知性の獲得
  (出荷・販売状況、広告宣伝・記事掲載等)
 ・商標全体として商品(役務)の普通名称でないこと

 地域団体商標として登録されると、以下の権利が保障されるようになります。

 ○指定商品(役務)について、登録商標を使用する権利を専有(25条)
 (○○産△△、○○地域における△△の提供等)
 ○類似商標の他人による使用等を排除(37条)
  差止請求権、損害賠償請求権、刑事罰等
 ○移転等の制限(24条の2)


地域団体商標に関する Q & A

Q 「地域ブランド」とは?
  地域ブランドとは、「地域に対する消費者の評価や期待」のことです。ここでいう「地域」とは、地域の持つのイメージ(Regional Brand)と、地域らしさや地域固有の魅力を生かした商品や観 光素材など(Products Brand)から構成されています。

Q 地域固有の魅力とは?
 地域には、その地域に固有の伝統や自然、地形、歴史、文化、技術、イベントなどがあります。この資源(魅力)を生かして、商品開発や街づくり、観光などに取り組むことで、それが他の地域と差別化された優位性(プレミアム)になります。

Q 地域ブランドの目的は?
 地域のイメージが良くなり、その地域の商品(産品)や観光、街に対する消費者の評価が高まれば、地域経済の活性化につながります。また、住民モラルや郷土愛の向上や、若者の地元での就職意欲の向上などをもたらし、居住人口の増加につながります。そのため、過疎化や高齢化に悩む地域の再生の切り札と考えられています。

Q 「地域団体商標」とは?
 従来は「地名+商品名」というものは、基本的には商標として登録ができませんでした(一部例外を除く)。それが商標法が改正になり、4月1日から申請しやすくなったものです。

Q 地域団体商標として申請できる主な条件、および登録の審査基準は?
 1.隣接した府県程度に周知されているもの
 2.一般名詞化していないこと
 3.その地域に関連性の深いもの
 4.申請者は農協や漁協などの組合(自治体や個人、会社などは不可)
が主な条件になります。これらを満たしていない場合には、申請されても拒絶されることになります。

Q どのようなものが申請されていますか?
 先週(4月10日)の時点の集計で、全国で324件が出願されました。そのうち都道府県別に集計するともっとも多かったのは京都府で109件、次に多いのは沖縄県の26件。ただし、1件も申請されていない県が8県もあるなど、都道府県によって申請状況はかなり異なっているようです。

Q 京都府からの申請が多いようですが、その特徴は?
 京都府の場合は、類似商標(京の八ッ橋、京の生八ッ橋、京名物八ッ橋など)が申請されているのが特徴的です。従来の商標を出願する場合には、このように類似商標も一緒に出願するケースが多いので、今回もこの考えから出願されていると思われます。また、具体的な商品を特定できないものも含まれており、拒絶されるものが少なくないように思われます。

Q 同一商標を複数の組合が申請した場合はどうなりますか?
 申請された324件の中には、同じ商標を複数の組合が申請しているケースがいくつかありますが、いずれも拒絶されると思われます。「地域団体商標審査基準説明会」の説明会テキストには「同一地域において、複数の団体が同一の商標を使用しており、複数の団体の商標がいずれも周知となっている場合には、需要者に出所の混同をもたらすおそれがあるため、第4条1項第10号の規定により、地域団体商標の登録を受けることはできません」とあります。また、同一名で異なる組合からの出願もありました。

Q 今回申請された中で、他にも拒絶されそうなものは?
 組合以外が申請しているケース(企業や組合以外の団体など)も何件かありました。これらは上記の条件を満たしていないため、拒絶されると思われます。

Q 「地域団体商標」に登録されたことによるメリットは?
 登録のメリットとすれば、
 @地域外や海外のニセモノが地域名を不法に使うことを阻止できる
 A申請を機に、地域名や地域名の入った商品名を見直すことができる
 B同一商標を複数の団体が申請する場合は拒絶される。つまり、商標申請によって業界がひとつにまとまるきっかけになる。
などがあります。

Q 商標をとれば、ニセモノを排除できますか?
 例えば、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドは商標が登録されていますが、ニセモノは後を絶ちません。つまり、商標が登録されたからといって、それで十分というわけではありません。つまり、以下のような管理が必要になります。
 1.商標が不正使用されていないかをチェックする機能が必要
 2.商標の使用ルールや品質の基準などを定める必要がある
 3.地域内外で不法に使われていた場合に、法的手段に訴える組織が必要
 4.商標の管理や運用などにかかる経費の財源が必要

Q 商標をとれば、認知度は向上しますか?
 「地域団体商標に登録されれば有名になる」とか「商標が取って売り上げ増やす」などと考えている人が少なくありませんが、商標と売り上げとは直接は関係ありません。ちなみに商標(一般の商標)は年間で約10万件が登録されていますが、そのうち、ヒットするのはほんの一部です。つまり、「商標になったから売れる」のではありません。地域団体商標の場合は、隣接都道府県程度の週知性が必要であり、つまり「売れたものをまねされないようにするために商標出願する」のが目的です。だから、商標の出願の前に、まずは商品自体の評価を高め、売れていることが必要です。

2006年4月16日

ブランド総合研究所 代表取締役   田中 章雄

 


注目記事


Copyright (C) 2006-2011 Brand Research Institute, Inc.