4月から出願が始まった地域団体商標で、都道府県別で最多の出願件数となった京都府。4月10日時点の集計で109件となっており、2位の沖縄県(26件)、3位の石川県(24件)を大きく引き離しました。
当初、京都府は記者発表で64商標の出願があると予想していましたが、それを大きく上回る数の出願があり、府の担当者も驚いているようです。京都名産品協同組合のように、ひとつの組合から24件も出願する例があり、地域団体商標に対しての関心はきわめて高いと言えるでしょう。
京都府では、2005年の法改正(施行は2006年4月1日)を受け、府、京都市、京都商工会議所、京都府中小企業団体中央会などが連携して、地域団体商標に関する説明会や個別相談会を頻繁に開催してきました。出願件数が他の都道府県と比べて圧倒的に多かったのは、こうした努力の成果ともいえます。
このような中で、京都府商工部商工総務室の熊谷隆担当係長は、状況を分析すると3つの問題点が出てきていると話しています。具体的には、
1 同じ商標を複数の団体が別々に出願している
2 類似した商標を複数の団体が別々に出願している
3 本来取得すべき(と思われる)組合以外が出願している
というものです。
もともと地域団体商標という制度は、製造業の組合を念頭に置かれていたと思われますが、販売サイド(正確には製造販売)の事業者の組合からの出願も多いのが実情です。
京都でも出願した組合に、全事業者が加入しているわけではないので、今まで当たり前のように使っていた名称が、ある日突然使えなくなる可能性もあるわけです。熊谷担当係長は今回の地域団体商標の出願は「ある意味で、知的財産としての商標に関心の薄い組合に対して警鐘を鳴らしてもらった」と話しています。
こうした問題については、一義的には組合間での話し合いになりますが、京都府としても対策をとる必要があると考えていると言います。登録された商標を持つ組合と、そうでない組合との間で、話し合いが付かない場合に備え、第三者的な立場で仲裁できるように府や市、商工会議所、中小企業団体中央会、農協に加えて、商標の専門家である弁理士や、弁護士も交えた組織を5月中に立ち上げる予定ということです。平成18年度当初予算では、他地域からの権利侵害に対する京都ブランド保護のための組織を作ることを予定していたようですが、まずは身内である京都府内の各組合間の調整から始まることになりそうです。
京都府以外の都道府県でも多かれ少なかれ同様の問題が生じる可能性があります。他に先んじて積極的に取り組む京都府のケースは、地域団体商標の今後についての試金石となりそうです。