近畿経済産業局と中小企業基盤整備機構近畿支部・北陸支部が主催で、9月28日に福井ワシントンホテルにて、定員を超える約130名(弊社推定)を集めて「地域ブランドコミュニケーションフォーラムin福井」が開催され、息をつく間もない緊迫と熱血のトークが繰り広げられ、満員の会場は熱気に包まれた。
まず「事例で語るブランドの上手な伝え方」をテーマに、ブランド総合研究所社長の田中章雄が基調講演。「ブランドとして消費者に伝わるには、アイコン化することと、商品やサービスを地域資源を結びつけることが必要」「モノがない時代から、選び・伝える時代への変革に対応しなければ生き残れない」「42キロのマラソンもいきなりは走れないが、最初は500メートルを走り、徐々に距離を伸ばせば走れる。ブランド戦略もゴールに向かって今すぐに取り組める具体的なプロジェクトに取り組むべき」と熱く語った。
続いて若狭広域経済懇話会会長の上野清治氏、箔一代表取締役社長の浅野邦子氏、伊賀の里モクモク手づくりファーム専務理事の吉田修氏、JTIC・SWISSで観光カリスマの山田桂一郎氏の4人がパネラーとなり、田中のコーディネートで「コミュニケーション戦略について」と題したパネルディスカッションを行ったが、過去に類を見ない熱血トークの連続となった。
上野氏は小浜における「食のまちづくり」や「御食の国若狭おばまブランド認証」、「キッズキッチン」による食育への取り組みなどを紹介。「子供たちに地域や食の魅力を伝えることが大切」「“売る”のと“イメージを高める”のとは違う」と語った。
浅野氏は金箔という材料を、商品に変えることで新しい「もの作り」を創造。「伝統工芸の産業化」という新しいビジネスにつながった経緯と苦労を紹介。「新しい商品はお客が教えてくれる」「見て触って感動させるのが大切」「ストーリーをどのように伝えるか」などが消費者からの評価を高めるのに重要であると指摘した。また、従業員教育には「やさしく厳しく愛を持って」という考えを述べた。
吉田氏は立ち上げた手づくりハムの会社が、体験型のファームにすることで大成功につながったという経験を紹介。単に野菜や牛乳を作って売るのではなく、大豆からは豆腐を作り、牛乳からはヨーグルトやチーズを作るというように、野菜や肉などの素材から自分たちで加工して商品化するという手法を披露した。「自分たちの商品の価格決定権は、自分たちで持つべき」「もの作りは本物を作ること。本物とは作り手の苦労が見えるもの」と熱く語った。
山田氏はスイスでの観光の考え方と、消費者の旅行にたいする行動を元に、「消費者は地名で行き先を選ばない」「個性のないありきたりの施設やサービスでは人は来ない」と、これまでの古い観光の考え方に対する苦言を呈した。「目的やテーマがなければ行動にはつながらない」「冬に来た人に、次の春や夏にも来たくなるように情報を発信し、期待させることが重要」などと強調した。
最後に福井をフランド化するために重要なこととして、「自分の町に自信を持って、スターを作り、語り部を作ること」(浅野氏)、「ダーウィンの進化論によれば、優れているものが生き残るのではない。変化に対応できるものだけが生き残る」(山田氏)、「健康長寿がキーワードになるのではないか」(上野氏)、「しがらみや他力本願、後ろ向きな言動があったのでは地域の明日がない」(吉田氏)などの意見が出た。そして「福井にはいいものがたくさんある。しかし伝えるのが上手とはいえない。自らの地域の魅力を明らかにし、それを消費者とのニーズを引き出すようにして伝える方法を考える『ブランド・コミュニケーション』に取り組んでもらいたい」(田中)と締めくくった。