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BRIレポート
地域のお宝ブランド発掘! Brand List No.2  『小豆島佃煮』

懐かしく、素朴な味わい ごはんとの相性抜群の無添加・佃煮


まさに垂涎ものの「真昆布の佃煮」。瓶入り(写真奥)75gで840円。
詳しくは安田食品のHP (http://www.yasudanotukudani.co.jp/)まで
 眼前に、「真昆布の佃煮」と銘打たれた香川県小豆島の特産品がある。平成17年度に農林水産省から委託を受けた(財)食品産業センターが、「地域食品ブランド表示基準(本場の本物)」に認定した、「小豆島佃煮」の数ある商品の中のひとつである。本場の本物は、地域の伝統的な製法で、地域特有の食材など厳選原料を用いてつくられる食品を、(財)食品産業センターが設置した審査専門委員会がその基準などをチェックし、認定するもの。認定後は、本場の本物マークを商品に貼ることができ、他製品との差別化が図れる。その選ばれし逸品が、目の前で凛とした佇まいを見せているのだ。

 熱々のごはんの上にその昆布を一枚のせてみる。肉厚の昆布は表面が神々しく輝き、ごはん粒の照りとあいまって実に「旨そう」である。たまらず、一気に口に運ぶ。すると、濃厚な醤油の風味と素材の旨味が口の中で合奏をはじめる。塩辛くなく、素朴な味わい。それはどこか郷愁を誘うような、懐かしい調べである。 「ようはね、昔の味ですね。無添加だからね。妙な後味が残らない。だからまた食べたいなと思わず箸が出るんですよ」。製造元である安田食品工業で代表取締役社長を務める鳥居弘明氏は、自慢の逸品をそう表現する。

 無添加。つまり化学調味料や合成保存料、合成着色料を一切使用していない、自然そのままの味ということであり、本場の本物に認定された小豆島佃煮はすべて無添加をうたっている。しかしそれは「言うは易く行うは難し」であり、加工品の佃煮でそれを実現するのはハードルが高い。最大の難関はズバリ「味」である。化学調味料を一切使用できないということは、人工的に味を微調整できないということ。つまり、原料の良し悪しがモロに味に現れてしまうのである。特に主原料となる「醤油」、そして昆布などの「素材」が鍵を握ることになる。

原料の「醤油」と「素材」に徹底的にこだわる


写真中ほどの一帯が醤油工場。麹菌により屋根は真っ黒に変色しているのですぐそれとわかる
 まず「醤油」についてだが、小豆島は実に400年以上の歴史を誇る醤油づくりの本場である。元々は温暖少雨な気候をいかした、塩田による製塩業が盛んな地域であり、江戸時代にその塩を使って醤油づくりが始まった。その伝統が育む醤油の特徴は、何といってもコクと香りが一般的な醤油に比べて抜きん出ていること。非常に濃厚なのである。真昆布の佃煮を含め本場の本物に認定された小豆島佃煮は、例外なくこの郷土自慢の醤油を使っているのだ。

 一方「素材」だが、これも徹底的なこだわりを見せる。醤油が濃く、上質であるため、「その味に負けないような素材を使わなければ、釣り合いが取れない」(鳥居社長)からである。例えば、昆布は、「生育した浜(浜格差)」と幅や厚み、うまみ成分などで判定する「等級」により格付けされるが、安田食品工業では、等級が最も高いクラスのものを仕入れて使う。また、本場の本物に認定される条件として、小豆島で30年以上つくり続けられている素材に限定したこともポイントである。その結果、昆布にくわえ、のり、わかめ、しいたけ、きゃらぶき、おじゃこちりめんの6品目のみが対象となった。いずれも素材の吟味から製法まで、地元業者がそのノウハウを十二分に蓄積したものばかりである。磨かれた醤油と厳選された素材との出会い、融合。佃煮の味はここに極まるわけである。

熟練の技の冴えから生まれる老舗の味


少量で炊く昆布に小豆島産の醤油をタイミングよく流し込んでいく
 製法へのこだわりも尋常ではない。「真昆布の佃煮」を例に取ると、昆布を見栄えが良くなるように5cmの正方形に丁寧に切り、釜で炊く。一度に炊く量は10kgであり、一般的な佃煮をつくる際に炊く量の140kgに比べて、明らかに少量生産となる。「少ない分もちろん手間はかかる。でも素材の隅々まで目が行き届き、味の均一性は高まる」と、安田食品工業で現場を取り仕切る森上隆研究室長は説明する。

 さらに炊き方では熟練の技が冴え渡る。「あまり炊きすぎると煮崩れる。逆に炊かなければ歯切れが悪くなる。色艶の出し方にもコツがある。原料の砂糖や醤油を入れるタイミングにも秘訣がある。もっといえば、同じ原料でも日によって僅かに変化するので、細かいさじ加減の調整が必要。そのすべてを頭に入れて、絶妙なあんばいで炊いていくわけです。長年の経験がものをいう世界であり、それが老舗の味をつくるわけですね」。森上室長は誇らしげに胸を張る。

 小豆島佃煮の起源は終戦直後。食糧難の時代だったが、醤油だけは大量にあり、それを何とか利用して産業を興そうとしたのがことの始まりだった。原料不足で最初は芋のつるで佃煮をつくったという。それから60年、今では醤油に劣らない一大産業に発展。小豆島の代表的な産業にまで上り詰めた。まさに「青は藍より出でて藍よりも青し」を地で行くような佃煮には、歴史と伝統、そして、小豆島の職人たちの“プライド”が宿っているのである。

2007年5月13日

 

 


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