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図1 平成19年度は1月から10月まで 出典:農林水産消費安全技術センター
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赤福や比内地鶏など「食の安全」を脅かす事件が多発している。図1は農林水産消費安全技術センターが、食品自主回収件数を年度ごとに集計した結果だが、平成19年は10カ月の集計であるにもかかわらず、平成18年度までの2倍を超える件数に増加している(図1参照)。
回収対象の商品を分析すると、分野別では「白い恋人」や「赤福」などの菓子類が最も多く、平成19年の608件のうち27%(106件)を占めている。次いで調理食品が15%(89件)、その他加工食品が9%(54件)、加工魚介類8%(47件)、調味料・スープ5%(32件)と続く。
また、回収の理由として最も多いのは賞味期限の改ざんや産地偽造などの「表示不適切」で、608件中 39%にあたる240件を占めていた。次に多いのは「規格や基準の不適合」で16%(97件)となっている。
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(図2)
食品自主回収の要因
出典:農林水産消費安全技術センター
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主な不正事件を見ていこう。まず6月に北海道苫小牧市の食肉加工卸会社ミートホープが、鶏肉や豚肉などを混ぜて牛ミンチと偽装していたことが発覚した。田中稔社長は不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で10月に逮捕され、同社も自己破産の手続き中である。
8月には、北海道札幌市の大手菓子メーカー石屋製菓が、北海道の代表的な土産品であるチョコレート菓子「白い恋人」の賞味期限を改ざんしていたことが明らかになった。さらに10月には伊勢土産で知られる「赤福餅」を製造している三重県伊勢市の赤福が、店頭で売れ残った商品を回収し、餡と餅を分離するなどして再利用、さらに消費期限も改ざんしていたことがわかった。
また、同月には秋田県大館市の食肉加工製造会社、比内鶏(ひないどり)が、卵を産みにくくなった「廃鶏(はいけい)」と呼ばれる雌の鶏を、日本三大地鶏のひとつとされている「比内地鶏」と偽り、加工・販売していたことがわかった。(主な食の不正事件を図3に掲載)
明るみになる事件の件数が急増しているのは、6月のミートホープ食肉偽装事件発覚以降、農林水産省への食品偽装の告発件数が急増していることも大きな要因のひとつ。同省の告発受付窓口「食品表示110番」に寄せられた告発(情報提供)は、4月以降10月末までに2148件にものぼり、昨年度1年間の1417件をすでに大幅に上回っている。
特に赤福の消費期限改ざんや比内鶏による偽装表示が明らかになった10月は、1ヵ月だけで過去最高の697件を数えている。告発の内容としては、これまでは一般の米を有名ブランド米として偽装するなどの産地偽装に関する情報が多かったが、最近は白い恋人や赤福の不正事件を受けてか、消費期限や賞味期限、製造日の改ざんに関する情報が増えてきたという。また現場の人間でしか知り得ないような専門的な情報が寄せられるケースも多く、「内部の人間からの(情報提供の)可能性が高いと推測できる」(農水省)という。
こうした食品偽装で告発される企業に共通しているのは、地域における優良企業であり、同族企業が多いこと。大企業や、その関連企業による事件・事故はあまり多くないのは、大企業ではコンプライアンス(法令順守)経営の意識が高まり、ブランド管理が急速に進んでいることが一因と見られる。一方で、中小企業や同族企業では、昔からの慣習をそのまま引き継いでいたり、規模の拡大に品質管理が追い付かなかったり、悪質な場合には利益を追求するあまり消費者不在の経営を続けている企業もあるということを意味している。
相次ぐ食品業界の不祥事を受けて農林水産省では「食品の信頼確保・向上対策推進本部」を設けた。さらに、農水省は11月7日、食品の偽装表示対策において警察庁との連携を強めると発表した。同省はこれまでも警察庁と同対策において協力・連携をしていたが、2007年になって相次いで食品の偽装表示事件が起きたことを受け、より強い連携が必要と判断した。具体的には、意見交換会の実施、相互連絡体制の強化、地方における連携の強化などに取り組み、食品偽装に関して取り締まりを強化する方針だ。