農林水産省は、農林水産業のもつ知的財産の競争力を活用し、国内外の消費者のニーズに応じた付加価値の高い農林水産物・食品の生産・販売を実現することによ
り、農山漁村の6次産業化や国際競争力の強化と地域活性化につなげることを目的として、2014年度までの5年間を実施期間とする新たな知的財産戦略を策定した。
知的財産の創造・活用に関しては、以下の戦略を推進する。
(1)研究・技術開発分野の創造力強化と成果の活用では、イネや和牛などの遺伝子機能の解明・特許の取得を進め、画期的な新品種・新素材を開発。研究成果は適切に権利化し、戦略的に活用する。
(2)農林漁業者等現場の技術・ノウハウ等の伝承・活用の促進では、篤農家の技術・ノウハウ(暗黙知)を農業者一般に利用可能な形に置き換えるAI(ア
グリインフォマティクス)システムを開発し、世界に例のない新しい農業の姿を目指す。
(3)地域ブランドの発掘・創造支援では、グローバルな競争の中で地域の農林水産業の持続的発展を図っていくため、ブランド価値の高い産品の発掘・創造に取り組む地域をきめ細かく支援する。
(4)食文化の創造・活用では、地元の食材を核とした伝統料理や新たな創作料理について、食材の生産者、地方行政、
料理人、ホテル・旅館等の関係者が連携して、全国的なPRや観光客向けの情報発信を行うとともに、商標・意匠等の知的財産権の取得を目指す取組を支援し、農山漁村の活
性化を図る。
(5)海外における日本ブランド展開では、海外に日本食・日本食材の魅力を十分に伝えることや、我が国の高品質な農林水産物・食品の認知を高めていくことにより、我が国の農林水産物・食品の輸出促進を図る。
(6)景観・伝統文化等の地域資源の再発見・活用では、農村景観や伝統文化等の地域資源を財産として活用し、グリーンツーリズム、地域資
源活用ビジネスの創出、教育の場としての農山漁村の活用といった取組を支援する。
(7)種苗の安定供給体制の確保では、優良な種苗について、知的財産の保護を図りつつ、その安定供給を図るため、稲・麦・
大豆、野菜、林業用種苗等について、それぞれの特性に応じた取組を推進する。
知的財産の保護強化に関しては、
(1)植物新品種の保護強化で、審査の迅速化と権利侵害対策の強化を進める。海外審査当局との品種登録の審査データの相互利用の推進等により、現在2.6年と
なっている平均審査期間を平成26年度には2.3年に短縮する。また、東アジア植物品種保護フォーラム・品種保護制度の国際標準化を推進する。
(2)海外での商標権侵害対策では、日本の地名、品種名等の中国等での商標出願・登録について、統一的体制により監視
を実施する「農林水産知的財産保護コンソーシアム」の活動を充実・強化する。
(3)家畜の遺伝資源の保護対策では、和牛の遺伝資源の適切な保護を図るため、全国に普及し得る和牛精液ストロー等の流
通管理体制の構築を図るとともに、「和牛」表示の厳格な運用を図る。
普及啓発・人材育成では、
(1)知的財産相談のワンストップ化で、農山漁村の6次産業化支援のためのワンストップサービスの一環として、地方農政局に、知的財産についての総合的な相談に対応できる窓口を設置するとともに、普及指導
員等の知的財産に関する知識の向上を図る。
(2)現場の農林漁業者・食品産業事業者の意識向上では、
農林漁業者や食品産業関係事業者が、流通、貿易、料理、デザインなど多様な外部の
人材との連携・協働を図ることができるよう、本省・地方農政局において、外部の専門
家の発掘・紹介や、セミナー等による情報提供を実施する。
(3)農林水産関係試験研究機関への普及啓発
研究段階から知的財産についての意識を高め、成果の活用を意識した研究開発を推進
するため、研究者等に対し、セミナー等を実施。また、農林水産分野の知財専門家の不
足を補完するため、知的財産担当者に対し、実践的なスキルアップ向上を目的とした対
話型研修を実施する。
関連情報:
農林水産省 「新たな農林水産省知的財産戦略」の策定について
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