地域ブランド調査2006[市版]結果発表会では、はじめての結果報告会を記念し、地域ブランドの専門家による討論会「市の魅力度ランキング分析」も同時開催。パネリストには、東京理科大学知財専門職大学院教授の生越由美氏、財団法人社会経済生産性本部余暇創研研究主幹の丁野朗氏、ブランドロジスティクス社代表取締役兼ブランド総合研究所シニアコンサルタントの小出正三を迎え、司会進行役兼パネリストとして、ブランド総研社長の田中章雄が加わり、4氏による熱い討論が展開された。
昔からある資源より、今から作る資源を
最初に今回の調査結果に対する率直な感想や意見を述べ合う形で討論会はスタート。小出は、「各地方の地域ブランドの関係者と話すと、根拠がないのに卑下する、逆に根拠がないのに自信を持つといったケースがよく見られる。企業だと必ず数字がベースになるのに、地域では数字をもとにした議論がない。今回の調査結果を地に足の着いた数字として活用すべきである」と、地域ブランド調査2006[市版]の意義を説明。
生越氏は、「各市の現状が見える化された画期的なデータ。特に、観光資源を自然資源、歴史資源、モノ資源、サービス資源の4ジャンルに分けて調査した部分で、自然、歴史への消費者の調査が高く、モノ、サービスが低いという結果は興味深い」と指摘した上で、「彦根市の彦根城美術館では、国宝の『彦根屏風』の商標を取得し、地域の関係者にその商標を年間8千円の使用料で活用させている。国宝を商標化にしているのは彦根市だけ。こうした、地域のモノ資源を安心して活用できる仕組み作りは必要である」と、モノ資源への具体的な取り組み例を示した。
サービス資源については、「伊勢市では伊勢神宮の社殿を建て替えたり国宝級の宝物を新調する、20年に1回の『式年遷宮(平成25年予定)』に向けた活動を展開中だが、この日本最大のお祭りを若い世代のほとんどが知らない。似たようなケースは全国各地にあると思うので、どんどん情報発信していくべき」と、ホームページなどによる情報発信を求めた。
田中は生越氏の指摘を受けて、「自然資源は自然そのものや古い町並みなど、形があり昔からあるもの。歴史資源は伝統や慣わしなど形がなく昔からあるもの。一方で、モノ資源は形があり、今から作るもので、サービス資源は形がなく今から作るものである。地域ブランドを作ろうと思ったとき、自然や歴史など昔からのもの
を活用することも大切だが、それにばかりしがみつかず、モノ、サービスで新しいものを作っていくという発想も必要。この点で明らかに努力不足の地域は少なくない。昔からの観光、神社、仏閣などに食、スポーツ、祭りなどを組み合わせて提供することが重要」と語った。
小出も、「上位100市の観光資源評価を見たときに感じたのは、モノ、サービス資源の評価があまりにも低いということ。同一県内の各市を比較すると、自然資源に当たる『自然や緑が豊か』や『交通の便がよい・行きやすい』では多くの市が高く評価されているが、モノ資源のうちの「食事がおいしい」では、高評価が1つないし2つと極端に少なくなる。食の開発は旅先の重要なカギであり今後の課題」と同調した。
丁野氏は、「知多半島の江戸前すしを再現した『尾州早すし』は、当地で250年前に作られていた粕酢を使うなど、地域の自然と歴史が凝縮しているモノ資源。食ではこういうものを作り上げて提供する必要がある。サービスについても、各地域のおもてなしや作法などがもっと前面に出てきてもいい」と具体例を交え、モノ、サービスの重要性を説明した。