特別分析レポート 第3回
観光意欲度
■地域ブランド調査「観光意欲」分析について 市区町村のブランド力に大きな影響を与えている1つの要因が「観光」であると考えられる。各市区町村の「観光」の強さと、消費者からどのように評価されているのか比較した。 具体的には、「地域ブランド調査」2007年度と2006年度のランキング結果を表1に示した。同様に、観光意欲度が伸びが大きかった市のランキング、魅力度の伸びについて表2に示した。。 (観光意欲度=「ぜひ行ってみたい」「機会があれば行ってみたい」「どちらともいえない」「あまり行きたいとは思わない」の中から選択してもらい、それぞれの回答結果を加重平均して算出) ■観光意欲度ランキング1位は札幌市 2007年の観光意欲度1位は、2006年に引き続き札幌市で、スコアが68.8(前年)から70.3(今年)と上昇している。同市は魅力度においても1位となっている。2位は函館市で65.8で、札幌市同様、前年度に引続き2位となった。4位の小樽市、8位の富良野市と、北海道の観光の強さがうかがえる。 3位は前年6位であった京都市でスコアが58.8(前年)から64.9(今年)と大きくポイントを増やしている。 ■観光意欲度伸び上昇1位は輪島市 観光意欲度の伸びを比較すると、最も上昇した市は輪島市で15.3ポイントの上昇である。92位から25位と一気に60番以上順位を上げている。輪島市は、魅力度伸び上昇においても1位となっており、2006年度から2007年度にかけて、消費者からの評価が観光含め全体的に上昇していることがうかがえる。 2位は飛騨市で15.1ポイントの上昇。飛騨市は魅力度も6.2ポイント増加しており、魅力度伸び上昇ランキングでは3位となっている。 3位は南アルプス市で14.0ポイントの上昇。順位が114位から40位へと1位の輪島市を凌ぐ順位の上がり方である。一方、魅力度の伸びは0.9ポイントと他に比べると低めとなっている。 上位3市を中部エリアの市が占めていたのに対して、4位から6位までは北海道・東北エリアが続く。 全体的に観光意欲度の伸びとともに、魅力度の伸びがみられるが、魅力度伸び上昇12位の奥州市、16位南房総市、19位東松島市など魅力度が逆に下がった地域もみられる。29位の別府市は温泉等の観光資源が豊富な地域として有名であるが、魅力度が6.9ポイントも下がっているなど、観光意欲度とは別の要因による影響が考えられる。 次に、観光意欲度の伸び上昇1位の輪島市、および2位の飛騨市について、具体的に事例を紹介するとともに、観光意欲度上昇の背景について探ってみた。 ■輪島市の観光意欲度の傾向と取り組み 図1は、輪島市の観光意欲度を年代別に比較した。2006年から2007年にかけて、10代を除くすべての年代で観光意欲度が上昇している。特に、30代以降の観光意欲度の伸びが大きい。 同市は2007年3月の大地震で大きな被害をうけている。地域ブランド調査結果からも輪島市の「事件・ニュース」での情報接触度が急上昇しており、地震によって認知度が一気に上がったことがうかがえる。また、地震の報道の際に、同市の歴史ある街並みが再三映し出されたこともあり、輪島市の復興に向けての期待が影響を与えていることが推測される。 一方、地震発生以前の2006年夏休みから、輪島市を含む石川県を舞台にした映画「釣りバカ日誌17」が全国公開された。俳優・片岡鶴太郎氏による輪島塗師役の熱演や、輪島の朝市シーンなど、輪島の地が一気に注目を浴びる結果となった。観光意欲度の30代以降の伸びの要因の1つとして、これら映画の影響も考えられる。 以上、映画によって一気に輪島市への注目が高まったこと、その後の地震によるニュース報道、それを見ていた消費者の輪島市復興への期待、輪島の復興にむけた活発な動きなどが複合的要素が重なり、今回の地域ブランド調査・観光意欲度ならびに魅力度上昇の結果に結びついていることが考えられる。 ■飛騨市の取り組み 飛騨市は前述で観光意欲度が一気に上昇した。このなかで、2つの注目される要因があげられる。1つは、輪島市と同様、マスメディアによる情報の影響である。同市は、2002年にNHK朝の連続テレビ小説「さくら」の舞台となった。ドラマ放映の際にも観光客増加の傾向がみられた。2007年4月より、再放送が始まり、またこの地への注目が集まっている。 2つ目に、市や町の取り組みとして、観光ルートの開発およびHPによる情報公開など、積極的に観光誘致の戦略をおこなっている背景がある。具体的には、飛騨市HPにおいて、「 古い町並みと日本の農村原風景散策コース 」 「NHK連続テレビ小説「さくら」ロケ地めぐりコース 」などテーマごとに10のコースを設定、情報発信をしている。また、「さくら」の主なロケ地となり、かつ多くの歴史的な街並みを有している飛騨市古川は、@古川の町並みや自然に調和した景観にふさわしい建物を表彰する「町並み景観デザイン賞」を創設、A飛騨の匠大工の技術を保存・伝承する取り組み、B祭りの整備など、観光まちづくりの動きを活発化させている。 以上、ドラマによる影響だけではなく、市独自で観光まちづくりの戦略を積極的におこなっていること、つまり、消費者からの期待に対して、行政や市民が地道に観光振興をつづけてきたことが、今回の地域ブランド調査・観光意欲度上昇結果に結びついていることが考えられる。
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【表1】観光意欲度ランキング
【表2】観光意欲度伸び上昇地域のランキング
【図1】年代別にみた輪島市の観光意欲度の比較
<輪島市の動き>
2006年夏休みに全国公開された右図の地域が舞台となった片岡鶴太郎氏が輪島塗の塗師屋役を演じたその他、輪島の 朝市シーンなど
【表2 情報接触度ランキング上位にみるコミュニケーションバランス】
◆2002年NHK朝の連続テレビ小説「さくら」の影響
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