■田中章雄のブランド戦略日記 Vol.10
中国で申請される地域名や地域産品の商標の横取り問題 |
いま、地域名や地域産品の商標が中国で申請される(いわゆる横取り)問題が大きくクローズアップされています。ジェトロの調べによると、すでに出願登録されている府県は、青森、秋田、福島、長野、群馬、千葉、愛知、岐阜、三重、富山、石川、福井、京都、和歌山、山口、高知、徳島、愛媛、熊本、の19府県。また、出願中なのは静岡、奈良、香川、広島、福岡、佐賀、宮崎、鹿児島の8県。合計で47都道府県中半数を超える27府県で登録および申請されていることがわかりました。
しかし、弊社でさらに調べてみますと、北海道、岩手などこれ以外にも出願・登録されているケースが少なくありません。また、名古屋、高山、讃岐など都道府県以外の地名もかなり登録されているようです。また、九谷焼、美濃焼、鳴門金時、松阪牛などの地域産品も登録申請されています。
さらに、「コシヒカリ」と「ひとめぼれ」については、「越光」や「一目惚」での商標が登録済みです。
いま、中国では知財に関する関心度が急速に高まっており、商標の登録ブームが起きています。商標登録申請件数は年を追って大幅に増加中で、02〜06年には毎年約10万件ずつ増加し、07年の申請件数は70万8千件に達しました。現時点での登録件数は約350万件と見られています。
ちなみに日本国内での商標の出願件数は年間約15万件で、そのうち登録査定されるのが約10万件ですから、中国での商標の急増ぶりがうかがえます。
さて、中国で出願または登録されてしまった場合であっても、以下の条件のいずれかを満たす場合には異議申し立てをすることができます。
1.公知な地名であること
2.地理的表示であること
3.先に使用している商標
4.その他不正な手段による登録
5.登録後3年間不使用の場合
そのため、登録または出願された商標が日本の地名で、中国の国内でも公知であることを証明できれば、異議申し立てができることになります。ただし、「青森」(出願してのケースなどでは、2003年に申請され、本来は公告期間中に異議申し立てをしたにも関わらず、4年後の2007年まで拒絶審査がかかったように、多くの時間と費用がかかる可能性があります。
(中国・広州市のデザイン業者が「青森」という商標5件を2003年に中国商標局に登録申請。肉や果実などで登録。公告期間中に青森県や青森市など県内24団体が連名で異議を申し立てました。2007年12月にようやく「青森は中国でも周知の地理的名称である」として、一部の出願で登録拒絶査定を行いました)
こうしたことを考えると、望ましきは取得される前に、防御を目的として出願することを検討するほうがいいのではないでしょうか。もちろん、その前に自分たちの地名や商品に関する商標が、不正に取得されていないかを調査することは不可欠なのは言うまでもありません。
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