■田中章雄のブランド戦略日記 Vol.19
汚染米の事件、その原因と対策はどうあるべきか |
米粉加工販売会社の三笠フーズが数年にわたり汚染米を、食用として販売していた事件が広がりを見せています。
三笠フーズが2003年度以降、政府から購入した汚染米は1408トン。そのうち半数近くの622トンが食用として販売したことが農水省の調査で分かりました。三笠フーズの汚染米は、殺虫剤メタミドホス米の流通先が364社。カビ毒アフラトキシン米は5社。殺虫剤アセタミプリド米は12社が判明し、消費者と取り扱い業者に大きな不安を与えています。
今回は、この事件のようなことが再発しないために、事件の原因と、その対策としてどうすればいいかを私なりに考えてみました。
原因のひとつは、事故米の販売先の使用状況を十分にチェックしなかったことにあります。環境汚染の有害物質であれば最終処分まで責任を持って管理するはず。裏帳簿の提出だけではなく、全量がどのように使用されたかを数量と、抜き打ち検査でチェックすべきだったのではないでしょうか。担当者には、汚染米の危険性のことが十分に理解されていなかったと思われます。
これは今回の汚染米だけではありません。米以外にも非食用として流通しているものが他にもあります。再発を防止するには、こうした商品がその後もどのようにして流通、使用されているかをチェックする「逆トレサビリティ」を厳密に行うべきではないでしょうか。
このトレサビリティを行わなかった責任は農水省にあると思います。今回の事件で回収の対象となった商品に関しては、その責任の一部は農水省にもあるわけで、回収費用を補填するなどの必要があるのではないでしょうか。(もちろん、最大の責任は三笠フーズなど、偽装・転売をした実際の取り扱い業者であるのは言うまでもありません)
工業製品であれば、PL法により製造者に責任が付きまといます。事故米を売った責任は、最後まで責任を持つという姿勢を、これからは必ず持ってもらいたいものです。
ふたつめには、購入して食品等に加工していた業者の問題です。「わたしたちも被害者だ」と言っていた人もいましたが、購入する際にその原料の生産地や、管理がどのようにされているのか、そしてその取り扱い業者は十分に信用が出来るものであるかをチェックすることは、みずからのブランドを守る上では不可欠であるのです。
消費者は少し高くても安全、安心な商品を選ぶようになってきています。それがブランドにつながっているのです。加工業者も同じで、価格の安いものを選ぶのではなく、それ以上に重要なものがあることを忘れてはいけません。
「事故米を使用することになった私たちも被害者だ」という声が聞こえています。確かに被害者かもしれません。しかし、被害を受けないように、原材料についてしっかりと吟味すること(トレサビリティ)が必要なのです。
食の安全を脅かす事件が続出しています。今回の事件をきっかけに、もういちど、食の安全を守るにはどうすべきかを真剣に考え直す必要がありそうです。
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