■田中章雄のブランド戦略日記 Vol.8
ご当地ヒーローの効果 |
山形商工会議所が名物イベント「日本一の芋煮会フェスティバル」で「大鍋宣隊イモニレンジャー」をデビューさせたという記事が掲載されました。(「山形商工会議所、「大鍋宣隊芋煮レンジャー」のサイト開設」を参照)
こうしたご当地ヒーロー(ローカルヒーロー)を活用した地域活性化の取り組みが最近急増しているようです。
インターネット上の百科事典「Wikipedeia」などを元に調べてみると、全国にあるご当地ヒーローは約600件。全47都道府県でご当地ヒーローが活躍していて、最も多いのは東京で43件、そして北海道の36件、愛知県の30件、大阪府の23件と続きます。ちなみに最も少ないのは奈良県と高知県の4件です(多いからいいというわけではありませんが)。
さて、このご当地ヒーローのうち半数を超えるのが複数のヒーローによるスーパー戦隊シリーズ。山形の「イモニレンジャー」もまさにそのひとつですね。このスーパー戦隊シリーズと言うのは、東映が1975年4月に開始した5人チームの特撮ヒーロー番組「秘密戦隊ゴレンジャー」(石ノ森章太郎原作)を模したもの。この番組が大人気を博したため、スーパー戦隊シリーズとして定着。1989年の「高速戦隊ターボレンジャー」や「恐竜戦隊ジュウレンジャー」「超力戦隊オーレンジャー」「未来戦隊タイムレンジャー」、「百獣戦隊ガオレンジャー」などと最近は『××戦隊△△レンジャー』というネーミングが多いため(一部は××マンなどというのもある)、ご当地ヒーローもまさにこのルールに基づいてネーミングされているケースが多いようです。
このスーパー戦隊シリーズは、ウルトラマンなどのような一人のヒーローではなく、複数のメンバー全員が力を合わせることで勝てる、というのが特徴。強靭な敵を倒す時にはチームワークが必要で、必殺技は全員でなければ繰り出せない。こうした設定が、地域での団結した取り組みが必要な地域ブランドのヒーローとして好んで用いられる所以です。
では、ご当地ヒーロー導入による効果としては何があるでしょうか。考えられる効果としては以下の4つがあります。
1.注目度を集める(知名度アップ) 2.わかりやすく説明する(理解度アップ) 3.子供に接する(ターゲット拡大) 4.場を盛り上げる(イメージアップ)
いずれも重要な効果ではありますが、全国で600も同様の取り組みがあれば、ご当地ヒーローを導入するだけで知名度や人気が高まると考えるのは楽観的といえます。また商品や取り組みをわかりやすく伝える一方で、その地域や取り組みの本当の魅力が伝わっていないかもしれません。また、ターゲットが家族層や子供であればいいのですが、それ以外の客層からは冷ややかな目で見られかねません。イベント等でのアトラクションとしてであればいいのですが、一時的なものでは持続的な効果は期待できません。
そう考えると、単純にご当地ヒーローを導入すれば成功するというものではなく、そのヒーローを使ってどのように展開していくのかと言う、長期的な視点や戦略が不可欠なのではないでしょうか。
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