■田中章雄のブランド戦略日記 Vol.12
熱気に満ちた「農商工連携フォーラム」の参加報告 |
先週の7月3日は東京国際フォーラムで開催された「農商工連携フォーラム」にコメンテーターとして参加しました。このフォーラム、定員は500名であるにもかかわらず、なんと倍率は2.5倍というすごい人気。私の知り合いも申し込んだのですが、抽選からはずれてしまったそうです。
さて、会場はテーブルのない椅子だけ(いわゆるシアター形式)で、立ち見や補助椅子も出るくらいの超満員。さすがにこれだけいるとすごい熱気です。
最初に農商工連携88選に選ばれた方々の表彰式。かなり緊張の様子でした。その後は、甘利経産相大臣のビデオレターの後、88選の中から片山りんご執行役の山野豊さんと、平田牧場社長の新田嘉七さんが登場し、ナビゲーター役の八塩圭子さんとのトークセッションです。
片山りんごはリンゴの生産者46人で組合を組織化して、弘前商工会議所やJETROと連携して10カ国以上の海外にりんごを輸出しましたが、相手国の嗜好に合わせて形や品種などを厳選。さらにヨーロッパで開発の進んでいる農作物の安全を確保する基準であるGAP(農業適正規範)を独自に取得し、輸出における障害を軽減。今は日本GAP協会を設立し、日本でのGAPの必要性を山野さんが説明しました。
一方、平牧三元豚や平牧金華豚などで人気の高い平田牧場の新田社長は、「飼料用米」で豚を育てるプロジェクトを紹介。遊佐町や生活クラブ生協連合会などと地域ぐるみでの取り組みを説明するとともに、全国の休耕田で同プロジェクトを導入すれば日本の穀物自給率は2割ほど上昇すると訴えました。
後半は川越で地ビール「COEDO」作りに取り組んでいる協同商事社長の朝霧幸嘉さんと北海道江別市で国産小麦「ハルユタカ」の生産をしている江別麦の会の会長片岡弘正さんをお招きして、八塩さんと私の4人によるパネルディスカッションです。
協同商事の朝霧さんは遊休田に植えた麦でビールを造ることに取り組み、川越の特産品である川越芋のうち、大きさや形などが基準に合わずに廃棄されていた芋をつかって、川越独自の地ビール「beniaka」を開発し、それが大成功を収めた事例を紹介していただきました。川越の麦、芋を活用して新たにビールを作る。そしてそれによって麦や芋の生産自体も新しい取り組みを行う。さらに川越の蔵の町並みという観光資源とも融合し、地域の活性化につながるのです。
一方江別麦の会は、非常にコシの強いもちもちとした食感が特徴の「ハルユタカ」という麦の品種を有していました。これを使ってラーメンなどの麺を作ることを計画。栽培面では「初冬撒き」という手法で生産量の拡大を実現。加工面では製粉するための小型の製粉機を独自に開発。そして「江別ラーメン」を作るに当たっては「寒干し」など製法を開発して江別独自の味を実現したのです。さらに小学生の絵をパッケージデザインに活用するなど、まさに地域ぐるみでの取り組みなのです。
今回、選ばれた農商工連携88選の取り組みは、大きく分けると次の4つのタイプになります。
1.全国(他地域)や海外に向け(チャネル拡大) 2.新しい食品や健康食品などの商品化 (市場拡大) 3.バイオやエネルギーなど、資源としての活用(異分野) 4.観光など、サービス分野での活用(他地域資源との融合)
今回の事例をこれに当てはめると、片山りんごは1、そして平田牧場は2と3、協同商事は2と4(もちろんこれ以外の要素もありますが)。そして江別麦の会は2。つまり、農商工を連携させることで、これまでとはちがう新しい市場を開拓し、地域活性化につながるような取り組みといえるでしょう。
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関連リンク
・飼料用米プロジェクト
http://www.town.yuza.yamagata.jp/Files/1/3616/html/index.html
・日本GAP協会
http://jgai.jp/
・平田牧場
http://www.hiraboku.com/
・片山りんご
http://www.infoaomori.ne.jp/krr/
・協同商事
http://www.kyodoshoji.co.jp/
・COEDOビール
http://www.coedobrewery.com/
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