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BRIレポート

田中章雄のブランド戦略日記 Vol.13
認知度とブランドを履き違えるな!

 「××県と××市は認知度が低い。この認知度を高めるためにブランド戦略を行いたいので、アドバイスをして欲しい」
 先日、私の元に某自治体のブランド戦略室の担当者が来て、こんな相談を投げかけました。毎年1000の市町村を対象にして、その認知度や魅力度、イメージなどを消費者3万人に対して調査する「地域ブランド調査」の結果によると、確かにその県には認知度の高い市がありません。
「確かに弊社の調査でも、××市も、そして××県の他の市も認知度は決して高くありません。しかし、それ以上に課題があるのじゃないですか?」と。
 調査および統計を30年間行っている私の意見として、日本の47都道府県の認知度、すなわち「知っている」人は9割を超えています。この認知度の順位をうんぬんして何の意味があるのでしょうか?
 それより、その県や市にある産品や観光資源、企業などの魅力を伝え、その地域に「観光に行ってみたい」「産品を買ってみたい」「住んでみたい」と思わせることの方が重要です。さらに、実際に観光に行ったり、産品を買ったりした人が、満足しないようでは、観光集客や産品の販売も長続きしません。美しい景色や、心のこもった料理やおもてなしがなければ、その地域に満足することも感動することもありません。良心的な旅行代理店はそんな地域を「オススメ旅行」として商品化することはないでしょうし、住民が満足していないまちに「住みたい」と思う人は決して多いとは思えません。
 「地図上で××県の位置がわからなかった」と言っていましたが、その市をアピールすべく、その県の位置を書いたポスターを貼ったところで、その県の認知度が上がるとは到底思えません。それより「××に行ってみたい」と思わせることの方がはるかに効果があるでしょう。

 最近、不祥事を起こし、一躍有名になった企業や地域が続出しています。いずれも認知度は高まっていますが、イメージや好感度が低下し、該当するあるいはそこに少しでも関与していた企業や地域は、そのブランドイメージの連鎖して低下すること(風評被害も含める)に苦しんでいます。
 ブランドとは「商品や地域に対して、消費者が評価や期待をしているもの」であって、決して知名度ではありません。よく、「知る人ぞ知る」とか「プロが認めた逸品」などという表現がありますが、ブランドと言うのは広くあまねく知られるのではなく、その商品や地域の魅力の虜になる人(ロイヤルカスタマー)がいて、その人の高い評価や満足が周辺の人に伝染・伝達されて、その商品や地域の価値(ブランドエクイティ)が高まり、持続的な発展を促されるもののことを言います。
 したがって地域のブランド戦略とは、そうした高い評価が得られるような産品や観光資源を作り出し、それを地域や企業の発展につなげるというものです。決して認知度を高めたり、見せ掛けの人気を高めることではないのです。

 さて、今年も全国1000市町村を対象とした「地域ブランド調査2008」を開始します。まもなく調査を開始し、9月に結果を発表する予定でいます。同時に、市町村の現状を魅力度、産品の購入意欲、観光意欲、イメージなどから徹底的に分析をする「個別報告書」と個別に「結果説明会」なども提供します。例えば観光意欲も回答者の居住地、年代などによって大きく異なります。その地域が誰からどのように評価され、そしてどこに問題があるのかを、表層的ではなく徹底的に調べることによって、ブランド戦略の足がかりになるはずです。
 また、前年、2年前と比較することで、その魅力やイメージ、購入意欲などがどのように変化をしているかを調べることは、昨年度に取り組んだ事業や方向性が正しかったかどうかを検証することになります。
 調査は結果が大切なのではなく、その結果につながるプロセスを検証し、新たな方向性を導くことが重要なのです。ぜひみなさんも結果を見るだけではなく、地域活性化につながるように活用していただきたいと思っております。

コラムの内容についてのご意見やご質問、そして情報などは何なりと 田中(tanaka(AT)tiiki.jp)までメールでお送りください。 ※メールのあて先は(AT)を@に置き換えてお送りください。
 

2008年7月14日

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<プレスリリース>地域ブランド調査2007を実施  (2008年7月11日)

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