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BRIレポート

田中章雄のブランド戦略日記 Vol.17
夏の日の怖いECサイトの大事件!
〜企業イメージをどん底に陥れる致命的な4つの失態〜

 暑い夏が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 さて、この夏休み中の8月8日に某大手ECサイトでとんでもない事件が起きました。
 なんと野菜ジュース930g入りのものが、12本で284円(!)で販売されてしまったのです。

 もちろん、この価格が間違ったものであるのか、あるいは倒産セールのような大安売りのものであるのか、ジュース好きの方のリストを収集するためのものなのか、はたまた新製品の広告宣伝を目的としたものであるのかは知るよしもありませんが、これが2チャンネルなどで「お得な野菜ジュース発見!」と話題になるには時間はかかりませんでした。

 さて、私の知り合いで、野菜ジュース大好きな女性が、その友人から「野菜ジュースが安く手に入るわよ」との情報を受け、8月8日に大喜びで申し込み、カードで決済まで済ませました。無事に予約が出来て、注文の確認メールがECサイトの運営者から届いたのです。

 ところが、その3日後に突然、運営者からメールが届きました。そこには次のように書かれていました。
 「このたび、お客様よりご注文いただいた以下の商品価格に誤りがございましたため、ご連絡させていただくとともにご迷惑をおかけしましたことを深くお詫びいたします。
 『野菜ジュース930g*12本』
 こちらの商品につきまして、まことに勝手ながらお客様のご注文をキャンセルさせていただきました。」

 楽しみで待っていた彼女ががっかりしたのは言うまでもありません。「受付メールを送り、カード決済を行ったあとで一方的に販売をキャンセルしていいの?」と納得できません。

 しかし、そのメールには以下のような文章が書かれていました。
 「××では、正確な商品情報を表示するよう最善の努力をしておりますが、今回のように誤った商品価格がサイト上に表示されていた場合は、キャンセルさせていただきますことをご理解いただきますようお願い申し上げます」

 つまり、担当者が価格を間違えて記入してしまったという事のようで、キャンセルにしなくてはならなかった事情も理解できなくはありません。ところが、よく考えてみるとこの一連の事件に対して、この運営者はとんでもない間違いを起こしています。

 1.運営者が送った注文キャンセルメールには、問い合わせ先が書いてない。
 「このEメールアドレスは、配信専用です。このメッセージにご返信されないようお願いいたします」と書いてあるだけで、電話連絡先も、メールアドレスも記載してない。つまり、例えばカード決済の状況などを確かめたいユーザーがいても、それができなくなっている

 2.責任の所在や、正確な価格情報が記されていない
 「商品価格に間違えがあった」とあるだけで、誰がどのような過程でミスを犯したのかという状況説明がない。情報開示の徹底がされていない。

 3.彼女が申し込んだ日の翌日(9日)には、サイトの画面から申し込めないようになっていたにもかかわらず、11日までの3日間は画面でもメールでもお詫びがなかった。
 対策を検討していたのかもしれないが、まずはお詫びをすべきではないか? 楽しみに待っている顧客の気持ちを踏みにじっている。

 4.リスト収集のための新たな手段の可能性がある
 格安の価格で提供することを書けば、多くの人が申込むことになる。これは新たな顧客リストの収集方法になりえる。
 もし実際に販売しないのであれば、「今回の申込をいただいた方に対して、今後は一切の営業活動や情報提供などに使用しない」という一文を書くべきである。それがなければ、新たなリスト収集の手法だと思われても仕方ない。

 以上の4つの点で、この運営者は適切な処理をしなかったのです。もちろん、彼女がこのECサイトに対する好感度は最悪になり、「もう二度とここからは他の商品も購入しない」と明言したのは言うまでもありません。そして、2チャンネルをはじめ、多くのブログや掲示板でこのECサイトの運営者と、メーカーに対して非難が集中したのです。

 夏の暑さのせいにするわけではありませんが、ECサイトに限らず、人間のすることは必ずミスをする可能性があります。その際にどのように対処するかによって、ブランドイメージは雲泥の差になって現れてしまいます。
 会社に対する被害を最小限にとどめることと、自らの正当性を重視すると、それは必ずや顧客の不満につながることになります。顧客満足度をいかにして高めるかが何より重要であり、そのためには何をすべきかを考えることが、ブランドを守ることにはとても重要であることを再認識すべきではないでしょうか。

 いま、インターネット通販が大流行していますが、簡単に参入し、簡単にかせぐことばかりを考えるのではなく、こうしたリスクがあることや、そして万が一のときのための対策を考えることを忘れないでもらいたいと思います。

コラムの内容についてのご意見やご質問、そして情報などは何なりと 田中(tanaka(AT)tiiki.jp)までメールでお送りください。 ※メールのあて先は(AT)を@に置き換えてお送りください。
 

2008年8月19日


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